今日は、ブリリアショートショートシアターにて開催されている「森の伝説 第二楽章完成記念 手塚治虫アートアニメーション特集上映」を観てきました。
プログラムがAとBと2つあり、Aプログラムは、「森の伝説」の第一楽章・第四楽章に加えて、新しく、手塚先生の息子である手塚眞さんが、父の遺志を継ぎ、「第二楽章」を誕生させました。制作メモは、手塚治虫先生の手で書かれたものが残っているので、それを映像化したそうです。後は、「第三楽章」を待つのみ。完成が待たれますね。「第二楽章」が完成するまで27年も間が空いてしまったので、今度は、もっと早く作って貰わなければっ!お待ちしております。
プログラムA
「森の伝説」
セリフが無く、チャイコフスキー交響曲第四番の調べにのせて、全四楽章それぞれに4つのエピソードを完成させるべく、手塚治虫が十数年に渡って、抗争を温めていたが、完成したのは2つだけ。手塚先生の死により、未完とされていましたが、創作メモにより、その遺志は引き継がれ、新たに第二楽章が制作されました。
第一章は、ある森が人間により木が切り倒され、その木で子供を育てていたムササビは、急いで子供を抱えて他の木へ移り始めますが、ただ1匹、途中で落とされてしまい、孤児となってしまいます。森の精は、可哀想に思い、その孤児のムササビを育て、大きくなります。一方、森はどんどん開発され、森の精は死に、ムササビが仲良くなった恋人も殺されてしまいます。ムササビは、人間に報復するべく、人間のテントがある場所近くで、木にフォークを突き立てます。そして・・・。後は映画を観てね。

第四楽章は、人間により開発されて行く森の精たちは、何とか、人間に開発を辞めて貰えるように、どうしたら良いのか、話し合いをします。ある者は、プレゼントを持って行って話せば分かると言い、ある者は戦うべきだと言い、ある者は魔法で脅かして追い出そうと言うのですが、まとまらず、結局、ノームたちが、バラの花を持って人間に森を壊さないで欲しいと頼みに行くのです。しかし、人間は聞く耳を持たず、ノームたちを機械で踏み潰し、開発を辞めようとはしません。そして・・・。後は映画を観てね。
第二楽章は、蜘蛛の巣にかかってしまった蜻蛉のメス。彼女を助けようと、オスの蜻蛉が色々手を尽くし、蜘蛛の巣からは助け出せたのですが、そのまま、葉の上に乗り、水に呑まれてしまいます。2人は、川を流され、魚に襲われたり、鼬に襲われたり、カエルに襲われたり、散々な目に合いながら、川を下って行きます。その途中で、オスの蜻蛉の羽が切れてしまい、飛ぶことが出来なくなってしまいます。オスは、自分の事は良いから、君だけでも逃げなさいとメスを突き放します。そして・・・。後は、映画を観てね。

どの作品も、傲慢な人間に襲われたり、命の危機に合いながらも、その自然の力を使い、命を繋げて行くというお話で、いかに、人間という動物が、地球を壊しているのかという事を、強く訴えていて、ゴメンナサイっていう気持ちになりました。確かに、私たちが開発などをして、絶滅してしまった動物が、何種類いる事か。人間さえいなければ、地球はもっと美しく、沢山の命が育まれていたはずなのに。人間が生息し、進化してしまったせいで、他の命が犠牲になってしまう。マジで、「寄生獣」の世界が必要になってくる状態なのかも知れません。
プログラムBは、ショートフィルム集です。
●「おす」
雄というものが、どういう習性かという事を言いながら、恐ろしい結末が襲ってくる話です。1962年の作品なのに、現代に通じる内容で、今観ても新鮮でした。
●「しずく」
海をイカダで一人旅をする男が、水も無く、ボロボロのマストに付いた水滴を飲もうと思い苦労する話です。面白いオチがあり、楽しめました。
私たちが知っている創世記とはちょっと違い、どうして私たちの知っている創世記が出来たのかという話です。面白いですよ。
●「ジャンピング」
この映像は面白いです。主人公の目線で描かれているので、これは今のゲームなどの通じる、最初の映像じゃないのかな。驚いちゃう話です。
●「おんぼろフィルム」
古いサイレント喜劇映画に似せて、ワザとキズなどを付けたりした映画です。サイレント漫画映画のパロディでありオマージュです。
●「プッシュ」
ボタンを押すだけで、何でも手に入る世界。男が神様にとんでもない願いを叶えて欲しいと詰め寄る、文明社会を皮肉った作品です。
●「めもりい」
写真のコラージュを使い、描くだけのアニメとは違う、ちょっと変わった映像を使って、トイレを色々なものに見立てて、戦争を批判し、皮肉る内容が面白い作品です。
●「人魚」
空想を禁じられた国で、魚から人魚を空想した少年が社会から弾圧され、悲しい運命をたどるお話です。考える事を切り取られたらどうなるのかという作品です。1964年の作品です。
●「村正」
妖刀「村正」を手に入れた武士が辿る数奇な運命を描いています。この作品を観て、”SHORT PEACE"
の「九十九」という作品を思い出しました。「九十九」はアカデミー賞にノミネートされましたよね。九十九の前に、この「村正」という作品があったんですね。ビックリしました。
●「自画像」
スロットで、色々な顔がコロコロ変わって、最後に手塚先生の顔になるって映像です。
このショートフィルム集、ぜひ、映画をやる人なら、観るべきだと思いました。ほとんどの映画の内容って、このショートフィルムの中に集約されているんですもん。「ジャンピング」は、ゴジラの目線の映像だし、「創世記」は、「猿の惑星」でしょ。「人魚」は、カッコーの巣の上でだし、もう、どれもこれも、今、作られている映画の原点がこのショートフィルムの中にあるんです。なんか、目から鱗が落ちるって、こう言う事を言うのかな。難しい事を言っているけど、結局は、ここにあったんだって感じなんです。ああー、気持ち良かった。

この感動を言葉では、上手く伝えられません。やっぱり、手塚治虫先生は、天才だったんだなぁって改めて思いました。ステキです。本当にステキです。ぜひ、皆さんに観て欲しい。これ、DVDとかで観れるのかしら。ハリウッドなど、海外のものばかり観ているのではなく、日本の原点を観なければ、始まらないでしょ。というか、ハリウッドより前に、日本でこんな事を映像化していた人が居たというのが、誇らしいです。
超お勧め映像なので、ぜひぜひ、観て欲しいです。
ぜひ、楽しんでくださいね。
「手塚治虫アートアニメーション特集上映」 http://www.brillia-sst.jp/topic/2014/08/post-222.html
- フィルムは生きている/手塚治虫伝 マンガ篇 [DVD]/石田卓也
- ¥4,104
- Amazon.co.jp
- 手塚治虫 実験アニメーション作品集 コンプリート DVD-BOX (全13作品, 154分) .../出演者不明
- ¥価格不明
- Amazon.co.jp