昨日から調子が悪かったのですが、風邪をひいたようで、熱が出ていて、今日も一日、寝込んでいました。主人がちょうど休みだったので、ずーっと寝ては本を読み、また寝てという一日で、天国でした。と言う訳で、夜には元気になって、今、ブログを書いています。本を読む時間があったので、感想を書きますね。
ストーリーは、
幼子の名はミハル。産廃処理場に放置された冷蔵庫から発見された、物言わぬ美少女。彼女が寺に身を寄せるようになってから、集落には凶事が発生し、邪気に蝕まれていく。猫の死。そして愛する母の死。冥界に旅立つ者を引き止めるため、ミハルは祈る。「アミダサマ!」―。その夜、愛し愛された者が少女に導かれ、交錯する。恐怖と感動が一度に押し寄せる、ホラーサスペンスの傑作。
というお話です。
沼田さんの作品って、ちょっと気持ちが悪くなるような、癇に障るような内容が多いのですが、今作もそうです。読んでいて、なんか、気持ちが悪いけど、でも、何が起きているわけではなく・・・という感じなんです。もちろん、色々な出来事が起きていくのですが、事件が起きるまでの、周りの人々が違和感があると思う内容が、とっても読んでいて気持ちが悪いんです。あ、「アミダサマ」という題名だけど、まったく仏教などの話ではないので、宗教を求める人は辞めてね。
まず、ある幼児が冷蔵庫の中で裸で見つかります。どうして冷蔵庫の中に居たのか、どうしてそれを見つけたのか。なぜ、その二人が見つけることになったのか、すべてが繋がっていて、恐ろしい結末に向けて進んでいきます。
少女を見つけた二人なんですが、一人がその近くに住む住職であり、彼は、住職でありながら、仏を妄信している訳ではなく、まるで哲学者のように、仏というものを理解している人物なんです。そんな彼は、迷信などは信じていないけれど、虫の知らせをよく感じる体質のようで、死というものをよく感知しているようです。
そしてもうひとりの悠人という青年は、最初、普通の青年なんです。住職と同じように、虫の知らせと言うか、”コエ”をある日聴いて、その少女が放置されている場所に誘導されてしまいます。やはり、彼も、感受性が強い性質のようで、少女と出会ってからは、その受動率が増えてしまい、生活に支障をきたし始めます。
住職は、少女に出会い、その少女と悠人を一緒にしておくと、危険なのではないかということを感じ、二人を近づけないように手を回します。そして自分で引き取り、面倒を見始めるのですが、何故か、その村に、どんどん悪と言うか、人の黒い部分や欲望が広がり、素朴な田舎町だったのが、酷い状況になっていく。恐ろしい展開をしていきます。
子供って、無垢で素直な分、欲望を抑える事を知りませんよね。たとえば、ボタンがあったら、”押しちゃダメですよ。”って言っても、絶対にガマンが出来なくなって押してしまうでしょ。その子供の精神が、大人にどんどん伝染してしまったら、欲望を抑える事も無く、ただ、本能のみで動いてしまう。「フランケン・ウィニー」のように、ペットが死んでしまっても、ガマン出来ずに生き返らせてしまう。子供なら許されても、大人には許されない、現実社会では受け入れられない、神に背く行為になってしまう、そんな人々が増えてしまったら、どうしたら良いのか。
最近は、現実社会でも、大人が子供のように、欲望を抑えられずに、人を殺したり、人から盗んだり、陥れたり、とにかく、日本も酷い社会になっていますよね。この小説の中では、ある村が舞台になっているけど、これが世界すべてに伝染してしまったらと思えて、恐ろしくなります。社会は、欲望だけで動く子供ではなく、大人で動いています。だから、社会人として分類されるでしょ。子供がちゃんと社会人として生きていけるように教育するのが大人です。身体だけでなく、精神も成長しなければ、大人の精神にならなければ、社会は成り立ちません。そんな事を教えてくれる小説でした。
たとえ、どんな力を持っていても、どんな声が聞こえても、その理性を失わず、未来に向いていけるよう、心を平穏に整え、自分の欲望が人の迷惑にならないかを精査することが、大人だと思います。仏教のアシュラは、少年でしょ。彼は、自分の欲望を抑えられないから、顔が3つにも分かれてしまったんじゃないかと思う時があります。顔が分かれてしまわないよう、気をつけようね。
私は、この小説、とても面白いと思いました。ホラーサスペンスと言いながら、とても精神的な世界を描いていて、楽しめると思いますよ。もし見つけたら、ぜひ、読んでみてください。この冬、コタツの中で読んで、ゾッとするのも良いかも知れませんよ。
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