「おーい、応為」
を観てきました。
ストーリーは、
浮世絵師・葛飾北斎の娘であるお栄は、ある絵師に嫁ぐが、かっこばかりの夫の絵を見下したことで離縁される。北斎のもとに戻ったお栄は、父娘として、そして師弟として、北斎と生涯をともにすることになる。
というお話です。
北斎の娘、お栄はある絵師のもとに嫁ぐが、かっこうばかりの夫の絵を見下したことで離縁となり、父のもとへと出戻る。帰ってきたお栄に文句を言う北斎だが、どこか嬉しそうな様子がうかがえる。父娘にして師弟。ゴミ屋敷状態の長屋で二人の生活が始まる。
犬を拾ってきてぼんやり過ごしていたお栄だが、北斎やその弟子たちを見て自分も筆を持ち始める。家事が苦手でヘビースモーカーだったので女としては欠陥だと言われたが、絵の才能はもしかしたら父以上とも思われていた。
ある日、父に呼ばれ行ってみると「葛飾応為」と書かれた紙を渡される。絵師としての名前を貰ったのだ。いつも「おーい!」と呼ばれることから、その名にしたようだ。そこからは一人の浮世絵師として活動をし始める。
お栄のよき理解者でもある善次郎との友情や、兄弟子の初五郎への淡い恋心、そして愛犬のさくらとの日常など、嫁ぎ先を飛び出してから二十余年、お栄は父の傍で美人画でも名を馳せる絵師となっていく。そして酷い飢饉が襲った年、北斎が描き続ける境地”富士”へと二人で向かい、富士が綺麗に見える場所の小屋で暮らし始める。後は、映画を観てくださいね。
葛飾北斎の娘・応為の伝記映画です。実際にはあまり応為についての歴史は解っておらず、想像部分も多いのではと思いますが、飯島虚心の 「葛飾北斎伝」と杉浦日向子 の「百日紅」を元に大森監督が脚本を書いていらっしゃいます。
「葛飾北斎伝」については読んでいないので解りませんが、「百日紅(サルスベリ)」は漫画でアニメにもなりましたよね。ミス・ホクサイって題名だったんじゃないかな。あと、NHKで宮崎あおいさん主演でドラマになりましたよね。題名は「眩(くらら)北斎の娘」で連続ドラマだったようです。私は全部は観れなかったような気がしますが、今はNHKオンデマンドで観れるようです。
そんな葛飾応為の半生を描いていました。豪快な振る舞いをしますが繊細な人だったと思います。でないとあの絵は描けません。影をしっかりと描いた見えたままを絵にする絵師。フェルメールやレンブラント系の絵なんです。北斎や歌麿、写楽とは違っていて、歌川一門の国芳や広重に近いかなと思います。絵はその人の内面が出てしまうので繊細で優しい人だったのかもしれません。
応為は結婚して家を出ていったものの、直ぐに出戻ったようでした。お茶も入れられないという文章が残っているようで、家事は苦手だったようです。北斎の娘ということで見合い結婚したのかなと思います。でも彼女自身に才能があったため、夫の絵は下手過ぎて見ていられなかったみたいですね。解らないでもない。
そして父親の家に戻ってくるのですが、これ通常なら母親の家に戻るような気がするんですけどね。母の家には病気の妹がいたので、面倒をかけたくなかったのかもしれません。それにこの応為、父親が大好きで尊敬していたんじゃないかな。悪態をガンガン突きながらも、父親の世話をしていましたから。
北斎は本当に絵を描くことしか出来ない人でしたから。取り付かれたように絵を描いていて、他の事は何もしないんです。食事はしていたかな。女も抱いていたかな。でもそれ以外は絵を描くだけなんです。ゴミもそこら辺に散らかしっぱなし。応為も片付けはしないので、それこそゴミ屋敷になっていて、どうしても住めなくなると引越しをするという酷い人たちでした。引っ越しする時は片付けていきなさいよっ!(笑)
この映画を観ていて思いましたが、本当に葛飾北斎という人は天才だったんでしょうね。でも天才だけじゃ売れませんから、天才で努力をする人だったんです。そして絵を描くことが好きだった。だからあんなに凄い絵を沢山描けたのだろうし、弟子に教えることも出来たんだと思うんです。ただの天才だけなら弟子に教えられませんよ。
永瀬さんが演じられた北斎ですが、私の想像していた北斎だったんですよね。滅茶苦茶なんだけど実は筋が通っていて、情に厚い人だったんだと思うんです。絵を描いて欲しいと言ってきたお侍さんのことも無下にしなかったし、さくらが紙に付けた足跡を使って絵を描いていたし、とても優しくて、自分の娘が大好きだったんじゃないかな。
そして凄い努力をした人だと思うんです。何度も描き直したりするってことは自分の絵に納得出来ていないってことでしょ。納得出来るまでいくらでも描くというのは努力でしょ。天才ならササッと描いてそれを渡すんじゃないの?自信満々なんだろうからね。でも、そんなの絵師じゃないよ。内から絞り出して描いたものが絵画なんだよ。
この映画で一つ残念だったのが、応為役の長澤さんが素晴らしい演技で、カッコいい応為を演じてくださっていて満点だったんだけど、如何せん背が高い。街並みを歩く時、どうしても和風建築と人物の対比が出てしまい、軒の高さや家に入った時の鴨居長押の高さと合わないですよねぇ。
CGとかで家のかさ上げ出来なかったのかなぁ。さすがに難しいのか。家の中では座っていたり中腰の演技が多かったので誤魔化せたけど、街を歩くと違和感がありましたね。こればかりは仕方が無いんだけどイメージがねぇ。時代劇のセットで基礎か壁をジャッキアップ出来るように出来ないかなぁ。NHKの大河ドラマとかでは気にならないから、何かやってると思うんだけどなぁ。ま、そんな事が気になりました。
この映画は賛否分かれるでしょうね。葛飾応為の伝記映画だから、大きな何かがある訳では無いので淡々と描いていくことになりハラハラドキドキは無いので、その時代の動きを前もって知って置くとか、私は「べらぼう」を観ているのであの時代と合わせながら観ました。
父と娘って、凄く思い合っていても恥ずかしくて言えないんですよね。娘がかわいくても言えなくて、お父さんが大切でも言えなくて、そんな二人の親子関係が痛いほど伝わってきて感動しました。今も昔も父と娘って同じなんですよ。面と向かって恥ずかしくて言えませんもんね。
私はこの映画、超!お薦めしたいと思います。私は好きでした。この時代に女性ながら絵を描いて稼ぐことが出来た応為。北斎の娘という”親の七光り”もあったかも知れないけど、それを跳ね飛ばすほどの才能を持っていた彼女だったからこそ、成功したんだと思います。二代目だって才能と努力をすれば本当に成功するんです。親の名前だけで認めて貰うのは無理ですからね。カッコいい応為を、ぜひ、観に行ってみてください。
ぜひ、楽しんできてくださいね。
「おーい、応為」