近ごろはとんとご無沙汰の書評欄を眺めていたら、久しぶりに興味を惹かれる何冊かに出会いました。

 

本『道長ものがたり』 山本淳子 朝日新聞出版 

これは同じ著者の『源氏物語の時代』朝日選書2007年、『私が源氏物語を書いたわけ』角川学芸出版2011年、『平安人(へいあんびと)の心で「源氏物語」を読む』朝日選書2014年(刊行年はいずれも初版のもの)に続いて、道長を中心に書かれたものとのことです。これはさっそく本屋さんに行ってみなくちゃ走る人

  『紫式部日記』をもとにした『私が源氏物語を書いたわけ』の

  十一「御堂関白道長妾」ー戸を叩く人の章では、『尊卑分脈』に「道長妾」

  と書かれた式部と道長の歌のやり取りが取り上げられています。

  せっかく主家すじから働きかけられているのに、無粋な対応では女房の役割

  としては形無しになります。そのあたりをどう応えるか、同僚だった(天才)

  和泉式部も例に出しながら、単なる召し人と、妻や恋人として数えるに足る

  存在の違いを述べ、無粋なうわさの種にならないように考慮した『紫式部集』

  と『日記』との記述の違いも示していて興味が尽きません。

  ちなみに、これの前の十章では「女房ーものの飾りにはあらず」と、貴族社

  会で女房に何が期待されていたかが述べられ、女房の重要性がよくわかります。

というわけで、どのような書きぶりかは予想がつくのですが・・・・読みたい!

おそらく、大河ドラマのほうは『尊卑分脈』に沿った描き方をしているのではないかと思われますが、それではあまりにも“かたそばぞかし(一面的)”く、興味本位の週刊誌的表現。しかしドラマが進むにつれて、漏れ聞こえてくるさまざまから類推すると、そんな見方が罷り通ってしまいそうで、ほんと、うんざりするわ。

 

本『科学の授業をはじめます』 ボニー・バルマス 文芸春秋

’60年代のアメリカ、科学者として女性が世を渡るのは難しかった時代に、科学者の道を閉ざされたものの料理番組に起用されたことをきっかけに、料理=化学であることを前面に押し出して番組をつくる・・・・この物語が事実に即しているかどうかは分かりませんが、家事と科学の関りを啓もうしている、カソウケン(家庭科学総合研究所)の内田麻理香先生(2014年2月に紹介)の仕事を思い浮かべます。

 

本『中学数学で磨く数学センス』 花木良 講談社ブルーバックス

もうこれはワタクシ的超弩級ストライクの主題です。

 

本『くらべて、けみして』 こいしゆか 新潮社

校閲部を舞台にしたお仕事漫画だとか。ことばそのものを対象にしたお仕事、面白そう!

 

本『メディアの「罪と罰」』 松本一弥 岩波書店

外岡秀俊さんの仕事も取り上げたこの本、自らの検証なしに進みがちな近ごろのメディアの在り方に対する警鐘としても読めそうです。

 

本『コンサートホール×オーケストラ』 豊田泰久・林田直樹・潮博恵 

                   アルテスパブリッシング

キタラの音響設計も担当した豊田泰久さん、音楽評論家林田直樹さんの対談。