3月8日にこそふさわしかったのですが、再びBBCドラマ「夜の来訪者」にかかわる時代についてのあれこれにお付き合いください。

 

このドラマより100年ほど前に『A New View of Society』(1813)を著した社会改革運動家ロバート・オウェン(1771~1858)がいました。産業革命の時代に紡績工場支配人として成功し、後に労働者の福祉に留意した大工場経営もしています。

1824年、労働組合の結成が法的に認められ、児童労働の禁止や労働時間の制限などもされるようになりました。

1838年には労働者の参政権が認められ、10時間労働が制度化されます。労働組合法(1871)フェビアン協会(1884)を経て1906年には労働党が結成されます。

こうした背景があったからこそ、エヴァたちは雇用主に賃上げを要求する挙にでるわけです。しかし新興ブルジョアジーのバーリントンは自分の利益を守ることしか念頭になく、エヴァを解雇します。

一方、すでに1865年にはジョン・スチュワート・ミル(1806~1873)が婦人参政権を掲げて下院議員に立候補して当選しますが、婦人参政権への道のりは遠く、30歳以上の女性戸主の参政権が認められるのは1918年、この時21歳以上の男子は参政権を得ています。

21歳以上の男女を対象とした普通選挙制度になるのは、さらに10年を経た1928年です。

婦人参政権獲得のための運動は、「未来を花束にして」*という映画にもなった、サフラジェット運動**です。

ブルジョア出身のミリセント・ギャレット・フォーセットはミルの演説を聞いており、サフラジェットより緩やかですが、婦人参政権協会(NUWSS)を創設しています。夫は急進派の国会議員。

フォーセットは、また、女性の大学進学のためにケンブリッジ大学のニューナム・カレッジ設立に貢献しています。

  *この映画で婦人参政権の運動家イーディスを演じた

   ヘレナ・ボナム=カーターは、はからずも婦人参政権に反対だった

   ハーバート・ヘンリー・アスキス(1852~1928 首相在任1908~1916)

   の曽孫にあたります。

  **サフラジェットは投票権・参政権を指すsuffrageから派生した、

   婦人参政権論者、特に過激な運動を展開したエメリン・パンクハースト

   (映画ではメリル・ストリープ)が主導した女性社会政治同盟(WSPU)

   のメンバーを指します。

   この運動の一環として、女性が、家からアスキスと政府の反対を乗り越えて

   議会へ到達する「Pank-A-Squith」という、首相アスキスをあてこすった

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