バルザックの『幻滅 メディア戦記』を下敷きにした映画を見てきました。
最近のフランスの俳優については殆ど知りません。出演陣の中で唯一顔なじみだったのは、ドパルデューだけでした。
「幻滅」 2022年 フランス
監督・脚本:グザヴィエ・ジャノリ
リュシアン:バンジャマン・ヴォアザン
記者ルストー:ヴァンサン・ラコスト
ルイーズ:セシル・ド・フランス
コラリー:サロメ・ドゥワルス
デスパール侯爵夫人:ジャンヌ・バリバール
作家ナタン:グザヴィエ・ドラン
ドリア:ジェラール・ドパルデュー
監督のジャノリが長年望んでいて、漸く映画化にこぎつけた作品とのこと。
嫌味な持ち味が好きになれない作家ですが、ずっと気になっていたバルザックです。
予告編を見て、これは良い!と思いましたが、何しろ、夜1回だけの上映で、11時近くまで街中をウロチョロしたくない。でも、見たい・・・・・というわけで、夫を巻き込み見てきました。
感想=もう、映画とはこうでなくちゃ!
フランス史に疎いワタクシですが、時代背景として恐怖政治が終わり貴族が復活と解説にありましたので、『レ・ミゼラブル』で描かれた7月革命のあとの貴族が再び幅を利かせ始めた頃のようです。なんとか上流階級に食い込みたい、文名も上げたいというリュシアンの奮闘にも拘らず、彼の思惑や知恵を上回る強固な壁によって敗北を喫する過程が、冷徹に描かれています。
貴族を名乗るというのは、名前に“ド”をつけたバルザック自身もそうですね。バルザックは成功裏に生涯を終えますが、彼自身が味わった成功と敗北をなぞるようなリュシアン像は、理想をひたすら追う若者の代表でしょう。
使われた音楽もよかった、ラモー「優雅なインドの国々」、ヴィヴァルディ「五色鶸」など。
ラモー「優雅なインドの国々」より