『カタコトのうわごと』 多和田葉子 青土社 2022年 初版
これは1999年に刊行され、新装版として2007年に再刊、そして新版として2022年に再度出版されたエッセイ集です。
新版は「書物復権」と題して11の出版社が共同して復刊したシリーズの1冊です。
11社は岩波書店・紀伊国屋書店・勁草書房・青土社・創元社・東京大学出版会・白水社・法政大学出版局・みすず書房・未来社・吉川弘文館です。
書物復権は1996年に第1回が企画され、2022年で26回になります。
各章はエッセイ+短編創作という構成です。
1 遊園地は噓つきの天国
エッセイ15編:執筆活動、ドイツ、生い立ちなどについて
「遊園地は嘘つきの天国」
2 衣服としての日本語
エッセイ7編:本、言語、演劇、日本語などについて
「異界の目」
3 線は具象 具象は線
エッセイ11編:外国語文学と外国文学、翻訳、演劇などについて
「花言葉」
「二〇四五年」
あとがき
新装版のためのあとがき
新版のためのあとがき
示唆に富んだエッセイ、それとつかず離れずな創作との絶妙な距離感で多和田さんの巧妙さを味わうことができます。
1では、イスラエルにいたころの私の姿と重ねて、全く知らなかった他言語との出会いを通して、言葉と“時差または格差”というようななんだかフィットしない感覚や、母国語を外から見るという不思議を思い出しました。
2は、少し古い日本語からうける印象をまくらに、ことばの思いもつかぬ位相についてのあれやこれや。
3は、ちかごろ増えてきた母国語以外の言語で書く作家、翻訳と文字、演劇・身体・言語・仮面・能・朗読・・・・演じる言語に深く付き合っている多和田さんならではの考察が述べられています。
創作の中では、特に、「異界の目」が気に入りました。
3編のあとがきが、また、それぞれ味わい深いです。