6月19,20日 札幌文化芸術劇場 ヒタル

 

シューマン:「ピアノ協奏曲 イ短調」 作品54*

ソリスト・アンコール

モーツアルト:「ピアノ・ソナタ 第5番」K283 より第3楽章* 19日

         「ピアノ・ソナタ 第14番」K457 より第3楽章* 20日

・・・・・・休憩・・・・・・

マーラー:「交響曲 第4番」**

 

指揮:川瀬健太郎

ピアノ:藤田真央*

メゾソプラノ:福原寿美枝**

コンサートマスター:田島高宏

 

初・藤田真央さんです。

2016年の浜松国際ピアノアカデミーコンクールで第1位、2017年クララ・ハスキル国際ピアノコンクールでは優勝、2019年のチャイコフスキー国際コンクールで第2位という、なんだか”あの小説”を地で行くような活躍ぶりで、是非とも生で聴きたいピアニストの一人でした。

去年、予定されていたコンサートも延期延期でついに聴けずじまいだったので、待ちかねていました。

手首(指も肘も)がとても柔らかい!なめらかで流れるようなピアノでした。

彼の演奏を聴いたかたの感想の中には、協奏曲では埋もれてしまうことがある、音が弱い(小さい?)との声もあがっていました。

私は全く気にならず、とても優雅なシューマンを聴かせていただいたと思います。

2日とも、川瀬さんが椅子の埃をはらうような仕草をしてアンコールを促しました。

アンコールがそれぞれ違っていたのはラッキーでした。

1日目のモーツアルト:第5番が作曲されたのはまだ10代のころ、そして、10年ほど後に作曲されたのが、2日目の14番で、(私のお気に入り)8番と2曲しかない短調のソナタです。

音譜記憶の隅っこにも引っかからなかったので、5番は初めて聴いたと思います音譜

(だいたい、1番~6番まではほとんど聴く機会が無かった!)

こういう選曲の妙を味わえて、今回はいっそう印象深いものになりました。

さぁ、次回はリサイタルで堪能したいものです。

これで、念願の反田恭平・牛田智大・藤田真央と若手3人とも生で聴けました。

 

今回とは違う曲ですが、4曲4様の演奏をどうぞ

(モーツアルトの7番というのもなかなか渋いのでは・・・・・)

 

休憩の後は、

あの出だしのシャンシャンシャンシャン・・・・と鈴の音ではじまるマーラーの4番。

そういえばマーラーを語った29人の指揮者のうち、”あんなものを交響曲の最初に使うなんて!尋常じゃない”と云っていたのはどなたでしたっけ?***

私はこれを聴きながら、ドヴォルジャークが連想されたのですが、たしかバレンボイムもマーラーとドヴォルジャークの関係が突然思い浮かんだと云っていたはず****

あの鈴の音に続く弦楽器のメロディがなんとも魅力的です。

というわけで、下品とか情緒過多とか下らないとか貶されたりもするようですが、ボヘミアの歌心を感じさせるマーラーはけっこう好きです。

第4楽章のソロはソプラノというのが相場のようですが、珍しくメゾソプラノが歌いました。

低音部は深くて力に満ちた歌声でした。「天上の楽しい生活」という内容には、もう少し軽やかな声質のほうが相応しかったのではないでしょうか。

2日目はかなり良くなりましたが、初日は高音部が力みがちで滑らかに聴こえなかったのが惜しまれます。

 

年に一度は札響と共演する川瀬さんは、よくオーケストラを歌わせていたと思います。

 

『マーラーを語る』(音楽之友社 2016年)で確かめたら

***フランスではマーラーを聴く機会が無かったので、ピエール・ブーレーズは

「・・・・橇の鈴に驚いた覚えがあります。そんなものが、しかも交響曲の頭で聴こえるなど、尋常じゃない・・・・」と語り、返す刀で「大地の歌」の最終楽章の長いオーボエ・ソロにがっかりした、と云っています。もちろん、そのあとはマーラーに目覚めてゆくのですよ。

****バレンボイムは、クーベリック&バイエルン放送響の1番を聴いた時に、曲の中に自然を感じてドヴォルジャークとの関係を理解したと語っています。