本『物語の役割』 小川洋子 ちくまプリマ―親書 2020年第8刷

 

ようやく、今年8月に発行された最新版を手に入れました。

第一部「物語の役割」は三鷹で、第二部「物語が生まれる現場」は京都で、

第三部「物語と私」は芦屋での講演がもとになっているそうです。

小川洋子さんの小説がどのように構想され生まれるかという部分は、勿論とても興味深いのですが、第二部にある”小説は過去を表現するもの”で語られた

”小説は常に過去を表現する。言葉は後からくるもので、モノあるいは出来事があって言葉はそれを表現し、紙の上に再現するのが役割”だというわけです。

  ・・・そうか”太初(はじめ)に言(ことば)あり”

  (ヨハネ伝福音書 第1章1節)じゃなかったのねひらめき電球

という茶々はおいといて、同じことを児童文学研究家の猪熊葉子さんは

白百合女子大大学院の教授退任記念最終講義(1999年2月)をまとめた

『児童文学最終講義 しあわせな大詰めを求めて』 すえもりブックス 2001年

の中で、スザンヌ・ランガー(アメリカの哲学者)『感情と形式』からの引用として言及されています。

ランガーは”物語が過去時制を取るのは、現在が無定形で、形が定まらないのに対して、過去はすでに形成され固定されたものとして、私たちの願望や努力から超越している”からだと云い、”心の中で重要な瞬間を再現することができる。その創造的作業(再現)の基礎が童謡から演劇・小説にいたる詩的芸術である”と説明しています。(かなり端折りました)

猪熊さんはランガーの言葉を”物語は・・・・・漠然と無定形なものに首尾一貫性を与え、はっきりと物事を理解させてくれるもの”と、分かり易くかみ砕いています。