今から42年前、全国16のイトーヨーカ堂店舗に子ども図書館が置かれました。

札幌では、ススキノにあったデパート・松坂屋の運営母体がイトーヨーカ堂になった時に設けられました。

市立図書館の利用規約がうるさかったころ、この図書館は貸出冊数が多く、期間も長く、年齢や住所などの利用制限が最小限で、蔵書数と配本の仕方、司書の質の高さは市立図書館をはるかに抜いていて、理想の子ども図書館でした。

’70年代は全国で家庭文庫活動が盛んになり、質の高い子どもの本が次々に出版された黄金時代でしたから、イトーヨーカ堂の子ども図書館もその勢いを後押ししました。

 

さて、ゆうべ寝るときに読み返したくなって手にとったのは

本『清冽 詩人茨木のり子の肖像』 後藤正治 中央公論新社 2010年初版 です。

帯に”初の本格評伝「倚りかからず」に生きた女流詩人の生涯”とあります。

この本は2010年12月に買ってすぐ読んで、そのまま詩集の隣に置いていました。

・・・・・・『須賀敦子を読む』(湯川豊 新潮社 2009年)と読み比べをしようと思いついたわけ

第1章 倚りかからず の交友の中に田中和雄の名が出てきます。

田中和雄が渋谷に童話屋を開いたころ、田中の博報堂時代の友人工藤直子に連れられて茨木のり子が訪ねたのをきっかけに交流が始まったことが書かれています。

そして、すっかり忘れていましたが、田中がイトーヨーカ堂に子ども図書館を開いたことがちゃんと書かれていました。

 

そうでした!イトーヨーカ堂子ども図書館の質の高さ、敷居の低さ(利用しやすさ)は、開設をした田中和雄の子どもの本に対する見識の高さによるものだったのです。

我が家では、この図書館を利用するためにせっせとススキノに通い、後に東京に移ってからは、電車を乗り継いで船橋まで通いました。

子どもの本をよく知っている司書の方たちとのお喋りの楽しさ、ときどき催されるいろいろな行事・・・(私は生活クラブと生協、近所の八百屋さんを贔屓にしていたので)スーパーはほとんど利用しなかったのですが、ほんとによく通ったなぁと懐かしくなります。(お金を落とさず、イトーヨーカ堂さんごめんなさい<m(__)m>お世話になりました)

子ども図書館で出会って、神田の冨山房、銀座の教文館、渋谷の童話屋まで買いに行った本もたくさんあります。

 

2009年9月、最後まで頑張っていた沼津、豊橋、大宮、堺、浜松、加古川、郡山、安城、福山を最後に、イトーヨーカ堂子ども図書館は幕を下ろします。再開運動もあったようですが、母体となる商業施設、童話屋の経済状態、社会の状況から存続は難しかったのでしょう。

 

なお、工藤直子は『のはらうた』(童話屋)などを出版した詩人・作家です。