3月20日
この日は、朝からボイラー本体を丸ごと取り換える工事が入っていて、終了したのが2時過ぎ。
それからお昼を食べ、<無駄に>浴槽に貯められたお湯が勿体なくて洗濯をしたり・・・・で
なぁんとなくくたびれた顔をしていたのか、夫が”映画見て、晩御飯も外で”と云いだしました
(浴槽のお湯は、新しい機械に正しい湯量を記憶させるために、規定量を貯めなければならない。
工事屋さんの陰謀ではありません)
で、見に行ったのが
「それでも夜は明ける」 英米合作
アカデミー賞を取って話題になったので、ご覧になった方も多いのではないでしょうか。
感想
*疲れている時に見る映画では無い
*成人に達していても、見るのにはきつ~~~いものがあります。 は~
*それでも、見終わった後ちゃんと食事が出来るなんて、私たちも結構しぶとい
時代は南北戦争の前、ソロモン・ノーサップという自由黒人(これも嫌な言葉ですね)が誘拐されて
ジョージア州のプランテーションで奴隷として働かされた実話にもとづくものです。
監督:スティーヴ・マックィーン(俳優のマックィーンではありませんよ。イギリス人)
ソロモン・ノーサップ:キウェテル・イジョフォー
最初の主人ウィリアム・フォード:ベネディクト・カンバーバッチ(いまや売れっ子!)
フォードの農園の大工頭ティビーツ:ポール・ダノ(残忍なヤツ)
ティビーツの手から逃れさせるために、フォードがソロモンを託した悪辣な農園主エッブス:
マイケル・ファスベンダー(残忍振りが巧すぎて、気分悪くなった)
エッブスの農園で働く腕のいい綿摘み女奴隷パッツィ:ルピタ・ニョンゴ(エッブスの餌食になる)
カナダ人の渡り大工サミュエル・バス:ブラッド・ピット
原題は
TWELVE YEARS A SLAVE
ソロモンはヴァイオリン弾きとして裕福な暮らしをしています。
(確か、予告編では左手で弓を弾いていたような・・・・はて?)
同じ町には奴隷身分の黒人たちも大勢いて、ソロモンの生活ぶりは、殊更自由をひけらかすような印象を受けます。
ソロモンの自由黒人としての脇の甘さ(自分は他の黒人と違う。才能で白人と平等に渡り合えるという自覚の無さ)が、白人の甘言に簡単に乗ってしまうことになります。
興業の話を持ってきた白人二人の気前の良さに、すっかり気を良くして酔っぱらい、気づいたら奴隷商人の元へ送り込まれていた、という展開。
初めに買い取ったフォードという農園主は、一見良心的に見えます。
(シャーロック・ホームズだけじゃないカンバーバッチくんでした!)
奴隷制度によって農園経営を成り立たせている以上、聖書の朗読くらいではとても平衡を保てないほど、ある面では目を瞑ることもしなくてはならないのです。
しかも、農園の管理は主人自らがすべてを仕切るわけではなく、ティビーツのような残忍な人間を、承知の上で、奴隷の監督にあてなければなりません。
農園労働の過酷さは支配する側の精神も犯し、なぜそんな振る舞いが出来るのかというくらい、悪辣で残忍な所業を楽しむような人間になっていきます。
このあたりは、日本でも炭鉱や工事現場のタコ部屋でも、同様のことが行われていましたね。
(今はそんなことは無いと信じたいですが・・・)
ソロモンの場合は、たまたま幸運に恵まれて<白人に>自由黒人であることを証明して貰えたので、家族の元へ帰ることが出来ましたが、大半の誘拐された自由黒人は生還することができませんでした。
生還後、この映画の原作となる本を出版したり、誘拐犯を告訴したりします(これも黒人の権利が制限されていることを自覚していない甘さ。相手方は無罪)。
その後、”地下鉄道”(奴隷を開放するための地下組織。奴隷制度を認めないカナダなどへの移住に協力した)をサポートしたりしましたが、不明部分が多く、死亡年・場所・理由については解明されていないとのことです。
ずい分前に、この地下鉄道を扱った子どもの本を読んだことがあったので、ブラッド・ピットがソロモンの願いをかなえた時に、ひょっとしたら、そういう運動の為に南部を渡り歩いていたのかと思いましたが、それは、ちょっと違ったようです。
このサミュエルというピットの役、カッコ良すぎ。ちょこっと出て美味しいとこどりの感、大です。
この翌日が札響帯広公演のヴォランティアでした。
3月23日 次に見たのが
「大統領の執事の涙」
これまた、ごく最近まで存命だった黒人の実話に基づいた映画です。
ユージン・アレンという実在の人物は、実際には8人の大統領に仕えましたが、映画ではルーズヴェルトの部分は削って、アイゼンハワー以降レーガンまでの7人の大統領が取り上げられています。
フィクションですから、家族構成など実際のアレンの生活とはちがうものになっています。
両親と共に綿畑で働いていたセシル。
ある日、母親(チョイ役なのにマライア・キャリーが出演!)が農園主に暴行を受け、それに抗った父親を殺されてしまいます。
農園の女主人(これまたチョイ役ながら、イギリスの名女優ヴァネッサ・レッドグレィヴです)に、家の中で働くように命じられます。
しかし、女主人の保護下にあっても、無事が保証されているわけではなく、働き口を求めて農園の外へ出ていきます。
偶然出会ったホテルマンに見込まれ、バトラーとして躾けられます。
そのホテルで、ホワイトハウスの人事担当者に見いだされ、ワシントンへ。
そして、アイゼンハワーからレーガンまでの7人の大統領に仕えることになります。
セシル・ゲインズ:フォレスト・ウィティカー
アイゼンハワー:ロビン・ウィリアムズ
ケネディ:ジェームズ・マースデン
その妻ジャクリーン:ミンカ・ケリー
ジョンソン:リーヴ・シュレィバー
ニクソン:ジョン・キューザック
レーガン:アラン・リックマン
その妻ナンシー:ジェーン・フォンダ
フォードとカーター、オバマなどは実写フィルムを使っていました。
大統領府という職場の、黒人たちと白人の立場の違いがこの映画でも表現され、私的な使用人のような扱いだったことがわかります。
父親の白人に対する態度に不満な長男は公民権運動に走り、一時はブラック・パンサーのメンバーになったりもします。
このように、一方で奴隷からひたすら仕事に忠実に働くことで地道に地歩を固める父親と、そのような父親の働きを土台に、さらに人としての平等な権利を求める意識に目覚めた息子との対立をアメリカの歴史の中で描き、セシルの目を通して見たアメリカ現代史のおもむきがあります。
個々の政治的事件は深追いしていませんが、押えどころはきちんと押さえられているように思いました。
ソロモンの時代に明けたとはいえなかった夜が、この映画では、長い時間をかけてようやく明けてきたようにみえました。
ところどころ、なかなか含蓄のあるセリフが挟まれていて面白く、ごく短い登場ながら、夫々の大統領の特徴も映し出されていたと思います。
こうしてみると、「ドライヴィング・ミス・ディジー」のような、黒人の使用人との関係が稀であり、いかに牧歌的であったかが想像できますね。