ヘレン・ミレンがミラノ大公を演じる”女性版”「テンペスト」を見てきました。
舞台人から見るとなじまないかもしれませんが、映画ならではの特撮が効果的でした。
シェクスピアがこれを見たら’イメージ通り’と膝を打つか、’やりすぎ’と顰め面をするか・・・・
私は、意外に’作りたかったのは、こういう舞台’と云ってくれそうな気がします。
というのも、シェクスピアの戯曲を読むと、言葉の魔術で喚起されるイメージがたいへん豊かで饒舌
だからです。
高校生くらいでは掴みきれなかった<意味>が、年を重ねることで、ある時ストンと分かることがあって
あらためて、豊饒で複雑なイメージに圧倒されたりします。
そのような想像力の持ち主であれば、この映画の出来を喜んでくれるのではないでしょうか。
演じている俳優たちの活き活きと楽しそうなこと
<自家薬籠中のものにする>とはこんなことを指しているのでしょうね。
イギリスの役者なら、誰もが演じたいと願っているシェクスピア劇ですものね。
そこで思い出すのは、アル・パチーノが作った「LOOKING FOR RICHARD」
邦題:リチャード三世を探して
タイトルの KING と RICHARD だけが色違いになっていて、つまり、<「リチャード三世」の映画を撮ろうとしているアメリカ人俳優たちのメイキング>といった体裁をとっているのです。
これはとても面白かったヾ(@°▽°@)ノ 良くできていました。
イギリス人ばかりか、アメリカ人俳優たちも、<イタリア系>アメリカ人なんかに出来る筈がないと
インタヴューで力説するのですが(名だたるシェクスピア俳優たち:ジョン・ギールグッドやヴァネッサ・レッドグレーヴ、ケネス・ブラナー・・・etc.が’アメリカ人がシェクスピアだって?ムリムリ’と
にべもない)我がパチーノくんはやっちまうんですねぇ。
それが、実に<シェクスピアな>出来
血縁を悉くなぎ倒してイングランド王に成り上がる非情なリチャードと、援軍来たらずで、あえなく戦死
するリチャードを見事に演じて、結果的にイギリス人ならずともシェクスピアを創りあげることができる
と証明しました。
たしか、出来上がりの感想を訊かれた件の俳優たちが’アメリカ人にしちゃ、良くできてるんじゃない’
とこたえていたような・・・・
その彼が「ヴェニスの商人」を演じた時には、ほかならぬイタリア人が演じるヴェネチア商人ですもの、
私には、ポーシャのほうがフェアじゃないと思えた程、金貸しのシャイロックに肩入れしました。
金貸しであること、ユダヤ人であることが当時のヨーロッパではどんなに酷い軽蔑の対象であったかが
丹念に描かれていたからです。
マフィアだけじゃないアル・パチーノがほんっとに良かった