モーツァルトの弦楽五重奏曲というとハ長調のK515、ト短調のK516が有名すぎて他の曲の影が薄くなりがちですが、他の曲も名曲揃いと思います。
そんな中で最近何回か聴いているのが、こちらです。
 

モーツァルト:弦楽五重奏曲第5番ニ長調K593
 

この曲の第1楽章はアレグロなのですが、ラルゲットの短い導入部で始まります。
これがなんとも寂しい、というか人生に疲れた、そんな風に響くのです。
そしてそれが楽章の終わりにまた再現される、長調ながらモーツァルトとしては明くる活発の音楽とは違ったものになっています。
この第1楽章に聴かれる「寂しさ」「厳しさ」にこの曲は支配されているようにパスピエには聞こえるのです。
それが、ちょっと鬱陶しく聞こえることもあるのですが、今はこの独特の世界に魅せられているところです。
 

演奏はホイトリンク四重奏団、ビオラはオットー・グラーフ
これはかなり前に50枚組のセット物の中に含まれていたもの。

 


これはバレンボイムの「フィガロの結婚」や「ドン・ジョバンニ」
テイトが指揮する交響曲を目当てに買ったのですが、一番の掘り出し物がホイトリンク四重奏団の演奏でした。
特にこのK593に限らずに弦楽五重奏曲が最高。
手元にあるスメタナ四重奏団やアマデウス四重奏団などよりも遙かにパスピエのお気に入りになっています。
地味ながら力強い、飽きのこない演奏もさることながら録音がまたいいのです。
良い、と云っても古い録音、所謂オーディオ的に良いというのではなくて、
音色、音場が自然なのです。
ですから音質が気にならずに、音楽に浸れる、そういう音なのです。
これは多分1967年頃の録音なのですが、こういうのを耳にすると
録音機材の向上と、録音されて出てくる音は、比例していないのではないかと
そう思ってしまうパスピエであります。
とにかくホイトリンク四重奏団の演奏、「ハイドン・セット」も含めて気に入っています(K387は収録されていないのが残念です)