頭の片隅に「アクセルを踏ませて貰えないの、もしかして私だけ?」という疑問がちらりとよぎりつつも

「初めは皆、クリープ現象だけで走るんだ。

これは、担当教官の教育方針に違いない」と無理矢理思い込もうとしていた私。


そんな私に、知りたくもなかった現実を突き付けて来たのは、他ならぬ鬼母であった。


ニヤニヤ「へっぽこちゃん、教習所はどうなん。

少しは、運転出来るようになったん?」


ひらめき「まだ始めて4時間やから、アクセルなんか踏んでへん。

クリープ現象で、走っているだけ」


ポーン「はあ?そんな話聞いた事も無いわ。

クリープ現象だけで、どうやって走るんよ」


あんぐり「ゆっくりだけれど、一応走るもん。

アクセルを踏んでいない段階でも、教習所内で車をぶつけまくってるし。

角を曲がる時に、どの位ハンドルを切ったら良いか全然分からへん。角の度に、ぶつかる」


滝汗「あんた、そこまでどん臭かったん?

クリープ現象で走る車なんて、無茶苦茶他の車の邪魔やん。皆、どうしてはるんや」


不安「どうって、そう言えば教官が後ろの車に謝りまくってはるわ。でも、きっと担当教官の指導方針やと思うわ。

だって、いきなりハンドルとアクセルを一気に操作するなんて難しすぎやもん。

初めからそんな高度な技、皆出来るわけ無い」


ニヒヒ「そんなわけ、あるかいな。

あんたの後ろで、大渋滞が起こってるんとちゃうか」


不安「ハンドル動かすので精一杯で、前を見るのすら大変やのに、後ろなんて見れるわけないやん。知らんわ」


ポーン「バックミラーがあるやんか。

後ろも横も見てへんの?」


ちょっと不満「だって私、横を見たら一緒にハンドルも横を向くねん。

先生は、前だけ見てたらええ。横と後ろはまだ見んでいい、って言うし」


ニヤニヤ「まさか、我が娘がそこまでとは。

前だけしか見なくて良い、なんて絶対にあんただけやわ」



そしてあろうことか鬼母は、私の教習の様子を、自分の友達に面白可笑しく触れ回ったのである👹

鬼母は、大人しく内向的な私と違って、無駄に顔が広く社交的で友達が多いのだ


田舎で、近所付き合いの濃い我が実家。

しょっ中、近所の人や母の友達が遊びに来る我が実家。


あっという間に、私は「クリープ現象だけで走る子」「前しか見られない子」としておばちゃん達の格好のネタとなり「へっぽこちゃんは、一体いつ免許を取得出来るのか」を皆が固唾を呑んで見守るという、妙なドラマの主人公へと変貌したのであった。

他人の不幸は蜜の味