今は昔、ある鄙の里に、いたくまめやかにして、品行まさしくなる女子中学生ありけり。
年月重なりて、そのまめやかなる女子、おのこを産みけり。その男子、成長して中学生となりにけり。



じゃあコンビニに寄って、からあげクンとかおにぎりの食べ歩きは?お腹すくやん」














信じられん。
母なぞ、制服のままゲーセンに寄って「うおー、いけー」とか叫びながら友との対戦に励んでいたぞ。

そもそも制服で登校すること以外、校則なぞ無かったぞ」



そんなの日曜日にやれば良いじゃん」
何と真面目な子なのだ。
「今日も生理です。何なら、不順で毎日生理です」と爽やかに言い切り、体育教師の舌打ちをものともせず、六年間一度もプール授業に参加しなかった私の子とも思えぬ。


大体、うちが寄り道して、バレたらママも学校に呼び出されて、怒られてるよ。
いいの?それで」
夕暮れが静かに終わりを告げ、窓の外にはじわじわと夜の気配が満ちていく。
生徒指導室には重苦しい沈黙が垂れこめ、時折教師の溜め息だけが響く。
うなだれる母子を前に、学年主任がようやく沈黙を破った。


誠に申し訳ございません」

それなのに、寄り道をススメられたのは何か理由がお有りですか」
上目遣いで、そっと前を窺う私。
担任、学年主任、そして校長が、呆れ返った様子で、刺すような視線を母子に向けてくる。

ただ、寄り道って楽しいよなあ、と思って。
本当に申し訳ございません」
母の回答に天を仰ぎ、嘆息を漏らす教師陣。

それまで、自宅待機で」

やめて。掲示板に1年◯組幼男子、右記の者を一ヶ月の停学処分に処する、という文書を貼り出さないで。
ごめんなさい。絶対に、寄り道なんか息子に勧めません」

うち、そんな事で怒られたくないもんね。
ママってさあ、聞いていたらとんでもない中学生だったよね」
そうか。今まで私は、自分は至って真面目な小市民だと認識してきたが、認知の歪みだったのか。
ひょっとして、制服のままゲーセンに行き、道でダラダラ歩き食べをし、プール授業を全部サボるとんでもねえ奴だったのか

だって全然厳しい学校じゃなかったもん。
成績さえ取っていたら、大体の事は笑って見てくれていたもん、先生達。
皆していたもん。多分………。
今は昔、いとおろかなる女子の中学生ありけり。年ごろを経て、その女子、いとまめやかなる男子を産みたりける。