重い腰を上げて、本棚に積み上がったテキストをようやく片付け始めた先日。
「こんなに第二志望校の過去問やってさあ。いつも合格者平均点を上回っていて、受験当日の感触も良かったのに、落とされたの、未だに納得がいかないよ。理由を知りたい」
「ママは、TOMASの先生と散々第二志望校腹立つ、ムカつく、と言い合った結果、全く未練が無くなったわ。
フツメンだけれど、感じが良いオトコに妙に優しくされ、思わせぶりな台詞を吐かれ
(=適正校の過去問の点数がよく取れて、問題との相性も一番良くて)
好きかも、と思ってしまい
(=これは合格確実だ、と思って)
いざ告白したら、そんなつもりじゃなかったのに、ごめん、とフラレた気分かしら
(=問答無用の灰色の画面)
そういうのが、一番ムカつくんや」
※第二志望校は何も悪くありません。
息子がやらかしただけです。
「うちも、未練は無いけれどムカつくんだよねえ。
せめて、何が悪かったのか教えて欲しいよ」
「君は何も悪くない。直す所は何も無いよ。
悪いのはぼくだから。何かごめん。
こういう台詞が、一番腹立つからねえ。
そして、選んだ女が普通だったりすると、益々もやもやすんねん。
へっぽこちゃんって可愛いよね、一緒に居ると落ち着く、とか言って、その気にさせたお前は何なんだ、私の気持ちを弄ぶな、みたいな」
「ママ、昔何かあったの?
じゃあ、熱望校には腹が立たないのは何故だ」
「母の古傷には触れんでよろしい。
熱望校は、性格も良くて成績優秀な学校一のイケメンにずっと憧れて
(=偏差値も高くて、学校の雰囲気も生徒さんも素敵で、もう全部が好きで)
想い余って告白したものの
(=過去問の出来も良くないし、偏差値も足りていない癖に、何が何でも熱望校、で受験)
優しく紳士的にフラレたみたいなものだから。
(=入試当日のお心遣いまで完璧で、想いを残させながらも、やっぱり灰色の画面)
後日、彼が自分よりもずっと美人な彼女と腕を組んでいるのを見かけ、やっぱりな、と納得しながらも、未練たっぷりで家で泣く、みたいな
(=校舎の短冊を見ると、熱望校の合格者は息子よりも成績が上の子で、納得の結果)」
「なるほど。じゃあ、埼玉校はどうなるの」
「君、本命の彼にいきなり告白するのは、勇気がいるだろ。良ければ、俺で練習しなよ。
もし本命がダメならさ。
俺と付き合っても良いんだぜ、と言っている」
「えっ、意味が分からないよ。
じゃあ、そもそも塾はどうなるの」
「少しでもスペックの高いお相手と付き合える様に、最低三年間必死で自分を磨き上げる修練の場や」
「じゃあ、最難関校は最高のスペックを持つ奴なの?」
「野球選手と女子アナのカップルみたいなもので、最早凄すぎて羨望の眼差ししか送れない別次元の話や。
NN企業経営者、NN医師、NN外資系金融……。
あかん、話が下衆すぎる。もうやめよう」
アホな話を息子とする、その時間が今の私の幸せ。