帰宅した幼男子の表情は、疲れは見られるものの、比較的晴れやか。
「おかえり。本当に大変だったね」
「午後の四教科試験は、本当にきついよ。
途中、頭がくらくらした。
ねえ、ママ。結果は、まだ見ていないよね」
「もっ、もちろんだよ。
ママは、約束は守るタイプよ。
どうだったか、見てみてよ」
ポチッ。
「うわあ、やったあ。
ようやくようやく、合格したよ。
うち、本当に合格したんだあ」
喜びを爆発させる幼男子。
良かったね。
本当に、本当に、頑張った。
「TOMASと早稲アカに連絡しなきゃ」
「えっ、いやあ。何度も連絡をするのも先生に迷惑だし、午後校の結果が出てから一緒に伝えた方が良いと思うよ」
言えやしない。言えやしないよ。
母がとっくに連絡済みで、一緒に泣きじゃくったり喜びを爆発させたなんて、とても言えやしないよ。
●午後校、合格発表
「ここは、午前校に全集中したから、自信は無い。国語は簡単だったけれど、算数が結構捻った問題が多かった」
ぱっと艶やかな桜色の画面が目に飛び込む。
「おめでとうございます。◯◯コース合格です」
まさかの上のコースに合格。
◯◯コース、Y偏差値59。
「えっ、本当に。手応え無かったのに。
第二志望校の方が、よく出来たのに。
うち、午後校は本当に疲れていてさ。
でも入試だし、最後までしっかり解こう、と思って頑張った」
「本当に、すごいよ。よく頑張ったね。
今までの幼男子だったら、きっと昨日の段階で気持ちが折れていて、こんなに頑張れなかったと思う。
どうやって、気持ちを立て直したの」
「昨日、絶対に合格している、と思っていた第二志望校が落ちていて、でも御守り校は合格していて。
その結果を見て、自分は行きたい、という気持ちが強すぎて空回りしているのかな、と思った。御守り校は、そこまで想いが強くないから合格出来たのかな、と。
今まで三年間も頑張って来て、これ以上合格を貰えなかったら、頑張って来た自分が可哀想だ、絶対にイヤだ、どうしたら良いだろう、と必死に考えた。
昨日、塾で早稲アカの先生に「空回りするなよ」と言われて、自分は気持ちが空回りしているかも、と思って。
「倍率が凄かった埼玉校に合格したのだから、実力は有る筈だ」と言われて、それでも第二志望校に落ちてしまったのは、やっぱり気持ちが強過ぎて、何かおかしい状態なのかも、って。
TOMASの先生から電話で、気持ちが途中で折れて、受験を途中でやめてしまった子の話と、5日まで頑張って、周りから無理だ、と思われていた学校に合格を頂いた子の話をされて。
実力は有るから、絶対に諦めないで、と言われてさ。
これでもうち、今まで無茶苦茶勉強して来たから、絶対に合格したいから、ssクラスでもボコボコにやられて来たから、もう負けたくない、諦めたら終わりだ、と思った。
だから今日は、力を抜こう、と思ってさ。
そうしたら、分からない問題が有っても、全然焦らなくて、冷静になったら面白い位解けた。
絶対に、この学校は合格したな。
これで駄目なら、もう仕方がない、と思った。
午後校は、国語は簡単な学校で、算数は捻っていたけれど、よく見たら熱望校の算数よりかは捻られていなくて。
だから、TOMASのグレートティーチャーとやって来た事を思い出しながら、解いてみた。
手応えは無かったけれど、解けていたんだ。
やったあ、うちサイコー」
模試の度に、緊張してケアレスミスを繰り返していた息子。
口を酸っぱくして、時間配分に気を付けろ、と言っても、国語も社会も最後まで終わらなかった処理能力の遅い息子。
君の受験は、本当に大変で紆余曲折だらけで、母は何度もやめたくなったけれど、君はようやく入試本番で、殻を破ったのだね。
君、サイコー。
明日、漸く我々母子のNN校に笑顔で向かえる。
長い長い受験生活の集大成に、サイコーの気分で挑戦できる。