塾の先生達と話し、外の空気を吸った事で、ようやく少し落ち着く。
午後受験のA校、泣きながら出願したから、きちんと募集要項も読みこめていない。
もう一度しっかり見直すと、社会と理科の試験が、併せて60分になっている事に気付く。
時刻は、午前校の試験が終わったところ。
幼男子は、今まで理社併せて60分、という試験は受けた事が無い。
急いで夫にLINEを送る。
「幼男子の様子はどうですか。
午後校、理社併せて60分の試験です。時間配分に気を付けて、と伝えて下さい。
また、第二志望校の倍率も合格最低点も例年通りなので、気持ちが浮足立っているのではないか、と心配しています。
本人には、リラックスして休憩時間にチョコでもつまんで、と伝えて下さい」
「本人いわく、午前校は出来たらしい。
全く緊張感は無く、パフェまで食べようとしている。LINEの件、了解」
そうか。出来たか。
でも、昨日も一昨日も息子は出来た、と言っていた。期待は出来ない。
●2月3日午後(急遽出願、Y56、共学)
こちらは、以前一度説明会に伺った学校。
凄く勉強に力を入れていて、カリキュラムもしっかり組まれている印象。
過去問を解いた事も無いので、まさにぶっつけ本番。
状況によって、当初の計画からは全く想像していなかった受験になるのだな、とぼんやり思う。
がんばれ、がんばれ、がんばって。
午後5時半。
幼男子は、まだ試験中。
午前校の第三志望校の合否結果は、6時に発表予定。
何気なく照会サイトを見ると、既に発表されている。
落ち着け、自分。
こちらは、元々倍率も高く厳しい。
過去問も、二回やっただけ。
ダメでも仕方がないのだから。
そんなにショックを受ける事はないのだから。
ギュッと目をつぶり、深呼吸をしてボタンを押す。
●午前校、合格発表
ぱっと華やかな桜色の画面が目に飛び込む。
「おめでとうございます。合格です」
うそ、あの子やったんだ。
このきついきつい状況で、勝ち取ったんだ。
昨日までとは、全く違う涙が頰を伝う。
やった、やった、やった、やったあ。
泣きながら、TOMASに架電。
「先生、第三志望校、遂にやっと合格しました」
「えっ、もう出ているの。
ちょっと待って。あっ、本当だ。
うおー、良かった、良かったよう」
「先生、一緒に泣いて下さるのですね」
「いや、だってこんなの泣くでしょ。
あいつ、凄いよ。よくこの状況で頑張ったよ」
先生と一緒にすすり泣きながら、この先生が担当で本当に良かったな、としみじみ思う。
事務手続きが苦手な先生。
たった10ヶ月の間に、沢山面談をして、沢山電話をして、沢山励まして下さった先生。
実の父親よりも、ずっとずっと息子に母に寄り添って下さった先生。
幼男子君、本当によく頑張ったね。
でも、君の合格は、こんなに大人をハラハラさせて、こんなに喜んでくれる人に支えられていた事を忘れないで。
散々、心配をさせている早稲アカの熱血校長にも架電。
「先生、遂に幼男子、第三志望校に合格しました」
「良かった、ああ本当に良かったあ。
お母さん、あいつ凄い成長じゃないですか。
無茶苦茶頑張ったじゃないですか」
一緒に喜び合いながら、あの子の受験は早稲アカとTOMASの両輪で漸く回っていたのだな、としみじみ痛感する。
飴と鞭。どちらも無ければ、きっと無理だった。
「実は、昨日TOMASからアドバイスを頂いて、急遽A校に午後出願しました。
まだ試験中ですが、結果が出たらまた連絡します」
幼男子は、合否結果は絶対に自分が先に見る、と言っていたけれど。
ごめんね。母は我慢できなかったよ。
帰宅した君に、どうやって見ていない振りをしようか。