頑張っている君が好き。
解けない問題に、泣きそうになった日も。
覚えられない社会に絶望して泣いた日も。
次の日にはきっと机に向かっている。
真面目に健気に努力する君が好き。
処理能力が遅くて、先生に言われた時間の倍もかけながら、それでも一生懸命テキストに向き合う。
母にイライラされながら、時には癇癪を起こしても、結局君は毎日机に向かっている。
マイペースな君はきらい。
速くやろう、間に合わない、早く速く。
そんな母の言葉を右から左に流し、ゆっくりゆっくりご飯を食べ、ゆっくり問題を考える。
早く早く早く、速く速く速く。
マイペースな君は、ゆっくりにしか出来ないのに。
何で、こんなに頑張っているのに怒られなくちゃいけないのだ。
ゆっくりにしか出来ないのも、なかなか覚えられないのも、難しい問題が解けないのも、本当に君が悪いのか。
偉そうに言う母は、果たして本当に優等生だったのか。
それでも諦めずに、投げ出さずに頑張るあなたが大好き。
分からない問題に、うんうん唸る横顔が、まだぷっくらしたほっぺたが、とてつもなく愛おしい。
小さい頃は、元気に育ってくれればそれで充分、と本気で思っていたのにね。
あのね。幼男子君。
母もゆっくりにしか出来ない子で、早く速くとずっと言われて来たの。
そして今だって、人よりもゆっくりにしか出来ないの。
そして私は、早く速くと言われる事が、とてもとても嫌いだった。
ごめん。明日は、ぐちぐち言わない。
相変わらずバンザイをして眠る、君の寝顔にそっと誓う。