息子の顔を見た瞬間、ほっとすると同時に激しい怒りが込み上げました。
「なんのつもりなん。何で、帰って来いひんのよ。あんた、今日が塾の日でも同じ事をしていたやろ。嫌やったら、やめたらいいやん。
自分で塾に電話をしろ、と言っただけで、何でこんな思いをしなあかんのよ」
「だって、朝ママが全然話さないんだもん。うわーん」
「口なんかききたくないわ。私の気持ちも分かってよ。ここまで、二人で頑張ってきてさあ。ママだって、いっぱい頑張ったのに、お金も時間も沢山掛けて、後8ヶ月でやめる、と言われて、平静でいられるか。
でも本当にやめたいなら、もう止めないよ。
塾に電話をしなさい」
「受験はやめたくないもん。でも、転塾したい」
「はっ?何で?それこそ、今の時期にリスクしかないやろ」
「学校の奴が、三人位でお前みたいにやらなくても、自分は学校の事も一杯やっているのに、偏差値も上がった、こんな事も出来る、と絡んで来る。
うちは、頑張っても成績も下がって、NNも落ちて、これからどんどん下がって、行ける学校もどこも無くなったらどうしよう、と思う。
早稲アカで、こんなに頑張っても、何で成績が上がらないの。何で出来ないの。もう嫌だ」
何だ、そんな事か。辛いのは分かっていたつもりだったけれど、この子はそこまで思い詰めていたのか。
NNに落ちた時は、意外に冷静に受け止めている、と思っていたけれど、そんな事は無かったのか。
幼すぎて、ちょっとバカ。
「冷静に考えてごらん。あんたがいつも算数のセンスが凄すぎて尊敬する、と言っているA君は、遊んでいる?
処理能力が速すぎて敵わない、と言っているB君も、塾がない日もいつも自習室に通っている、と言っていたよね。
いくら地頭が良くても、皆頑張らないとやらないと、成績は出ない時期なんだよ。
学校の子、日能研と言っていたけれど、日能研は早稲アカよりもテストは多いし、遊んでいて成績が出るような甘い塾じゃない。
その子達、不安なんだよ。でも頑張れないから、君に絡んでいるだけ」
「じゃあ、遊んでいて成績が上がったのは嘘なの?不安なら、勉強すればいいじゃん」
「不安で、もうやめる、といって癇癪起こして逃げたのは君も一緒でしょ。
続けるなら、今日だって組分け前の貴重な一日を無駄にしたよ。
君たち皆、幼すぎてちょっとバカなの。
塾を変えたら、頑張らずに成績が上がるなんて、ちょっと考えたら有り得ないの分かるでしょ。
あと、頑張ってもチャレンジ校や熱望校に届かなかったら、仕方がないよ。大丈夫だよ。
大丈夫なように、ママは沢山学校を見に行っているから。
遠いけれど、鉄研が有って君が楽しく過ごせそうな男子校、いくつか見付けているから。
最後は、絶対にやって良かった受験にするから」
「何で、うちはNNも行けないの。もう、テストが怖い。きっとまた、悪いんだ。うわーん」