小児の脳の発達促進や、高齢者の脳の老化防止といった運動の効能に関する最近の論文を総覧した総説です。
営簿原文と、原論分は:
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2011.7.25 , EurekAlert
より:
近年の111の研究による知見から、有酸素性エクササイズと筋力トレーニングが子どもから高齢者まで有効であることが分かるというレヴューが発表されている。ラットやマウスを対象にした実験室内での知見と結びつける事で、運動によって脳機能が好影響を受けるという考えにも妥当性が見られるようだと指摘されている。
有酸素運動は幼年時代における認知的機能を、生涯にわたって方向付けるという意味合いに於いて重要な役割をもっているようだ。例えば、身体的な不活動が学業パーフォーマンスの低下に関連し、標準的な神経心理学テスト(記憶力や注意力、意思決定について検討するもの)の結果でも悪い成績と関連している様である。このような作用は若年及び高齢成人に於いても敷衍して考える事ができるものであり、意思決定に関して有酸素運動が有益であるという確固とした根拠が見られる。しかしながら、筋力トレーニングが子どもの脳の健全性に対して有益性を示すという研究はほとんどないものの、高強度および高重量の筋力トレーニングによって高齢成人の記憶力が改善されるという成果が報告されている。
動物試験では、有酸素運動の脳機能に対する影響を検討した研究から、様々なメカニズムがこの有益性について関連しているようだと報告されている。例えば、運動によって脳の構造的変化が見られたり、神経細胞や血管の新生・拡張が見られるなどの報告である。BDNFやIGF-1といった神経伝達化学物質の分泌も促進され、脳細胞の成長や分裂、修復が促進されるのだ。
運動が脳機能や構造に対して有益な作用を示すという報告がこのように上げられているものの、この分野に関する科学的文献が未だに多くないことも研究は明らかにした。例えば、どのような運動が脳機能の健全性や認知能力に影響を与えるのかについては今後のさらなる研究が必要だ。同様に、ヒト研究と動物試験による知見の統合的な活用が必要である都指摘されており、例えば動物による生涯を通じた運動の作用が、ヒトに捉えなおしたときにどのような時点でどのような作用をするのか、BDNFやIGF-1などをマーカーとして検討するなどといった、統合的な検討が必要だと指摘している。
レヴューされた研究は有酸素性運動と筋力トレーニング双方が脳の健全性と機能維持に有益であるということを示すものであったが、これらの作用についてより良く理解するためにはさらなる研究が必要である。現状、脳機能の強化のためと謳われて多くの印刷教材や、テレビ番組、インターネットベースや家庭用ゲーム機ベースのいわゆる『脳トレ』素材が存在しているが、これらについて脳機能を増進するという根拠は非常に薄弱であって、むしろ身体活動が脳機能に好影響を与えるという論点の方がより有望性が高いと研究者は指摘している。
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