今韓国は先週起きたある悪夢のような事件の衝撃に包まれています。
このブログの読者さんの中にもご存知の方がいらっしゃるかと思いますが…。
韓国有数の繁華街、江南駅近くの雑居ビルで、トイレ(韓国の雑居ビルは男女共用トイレが多いです)に入った23歳の女性が、見ず知らずの34歳の男に刃物でメッタ刺しにされて亡くなりました。
その事件そのものの陰惨さもさることながら、
衝撃的だったのが
「普段から女性にバカにされてきて、復讐したかった」
という犯人の犯行動機。
女性であるという理由だけで非業の死を遂げるしかなかったこの事件に対し
「これは被害者一人の問題ではない」
「韓国女性すべてに対する犯罪だ」
と、韓国社会に深く根をはる「女性嫌悪」が生んだ犯罪として、大きな社会現象をまきおこしています。
江南駅には事件直後から被害女性を追悼するメッセージを書いたポストイットが貼られるように…。
正直2人の娘を持つ身としては他人事ではない事件…。先週の土曜日、僕も江南を訪れてきました。
江南駅定番の待ち合わせスポット、10番出口。
外に出るとすぐ目に飛び込んで来たのは
追悼のために訪れた多くの人たち。
ニュースや新聞で目にしたまんまの風景が唐突に現れ、瞬間的に言葉を失います。
やはり事件が事件だけに女性の姿が圧倒的に多いのですが、中には男性もちらほら。
びっしりと埋め尽くされた追悼メッセージ。
ひとつひとつに祈りが込められています。
誰が設置したのか、メッセージを書くためのスペースには途切れることなく人が集まっていました。
僕もひとこと。
手向けられた花束。
それにしても…
静かです。
10番出口といえば江南駅を代表する待ち合わせスポット。
ましてや大勢の人で賑わう土曜の午後です。
なのに、
ものすごく静かでした。
人はたくさんいるのに、みんなが沈黙の中で何かと向き合っているような…
テレビを通して見るのとは全く違う、圧倒的な現場の雰囲気が辺りを支配していました。
本当に、後にも先にも、あんな静かな江南は初めてでした。
と、突然
静寂をやぶるように
わぁっという声が上がりました。
ある男性と女性たちが言い合っています。
この追悼ムードに異議を唱える人と
追悼に来た人たちの間で論争が起きたようです。
みると、
ちょっと離れた場所でも…。
激しいシュプレヒコールと、
拍手がかわるがわる上がります。
「何でもかんでも女性嫌悪にむすびつけるな」
「男だからって犯罪者予備軍扱いするな」
「軍隊にも行ってないくせに」
などなど
僕が耳にしただけでも、こんな声が上がっていました。
たしかにこの追悼ムードに
どれほどの妥当性があるのか、僕にはわかりません。
ただ、一人の罪なき女性の死が
数多くの韓国女性の心に衝撃を与え
これだけ大きな動きを生んだ背景には、
彼女たちを抑圧してきた大きな何かが
確かにあるような気がしています。
韓国社会で生きる一人の異邦人として、
最後に被害に遭われた女性に
心から追悼の意を表します。