お金や物などで釣って、勉強させたりすることは、子どもの「おもしろいからやる」という内発的な動機付けを低下させてしまう可能性があります。
同じく競争も内発的動機づけを低下させる可能性について考えます!
つまり、競争させていると子供が本来楽しい、おもしろいと思ってやっていることでも陳腐でつまらないことにしてしまう可能性があるというのです。
ロチェスター大学のエドワード・デシはこのような実験をしたそうです。
ソマ・パズルという当時売り出されたばかりのパズルを使ってこの実験は行われました。
被験者に、もう一人の人とペアーになって3つのパズルを解いてもらいます。
実はもう一人の人とはサクラなんですけどね。
1つのグループの被験者には、ペアーの人より早くパズルを解いて勝つことが求められました。
もう一つのグループの被験者は、単にできるだけ早くパズルを解くことが求められますが、ペアーの人と競争して勝つことは求められません。
その際に、サクラとなった人は、被験者よりもパズルを早く解くことがないように指示が出されています。
つまり被験者は必ずサクラよりも早くパズルを解くことができるのです。
いわゆる相手がだれであっても、勝利できるように仕組まれていたのです。
その結果は?
デシは、このように述べています。
競争条件の被験者は、単にできるだけ早く解くようにとだけ指示された被験者たちに比べて、その後に内発的動機づけを示すことがないという実験結果が見出されたのである。
競争するという体験が、ソマ・パズルのようなおもしろい課題に対する内発的動機づけを低めてしまったのである。
彼らは勝負には勝っても、競争条件からプレッシャーを受け統制されていると感じ、パズルがまさに、おもしろいから解きたいという気持ちを失ってしまったのである。
いかがでしょう。
実験の結果は、競争させることによって内発的動機づけを低めてしまう結果になってしまったのです。
ここで内発的動機づけに関して、デシの定義をひいておきます。
内発的動機づけとは、活動することそれ自体がその活動の目的であるような行為の過程、つまり、活動それ自体に内在する報酬のために行う行為の過程を示す。
競争を強いることによって、それをすること自体が楽しいというからやるという内発的動機が低下してしまうわけです。
そう考えると小学生の頃から競争へとかきたてるのは、子どもが心から楽しんで学びたい、そんな気持ちも削いでしまう可能性もありそうですね。
競争は子供たちの心にプレッシャーを与えることでしょう。
それが子供の心にマイナスに働いてしまうとしたら・・・
子供の学年が上に行くに従い、学ぶことへの興味を失い、勉強が苦手と感じる子が多くなるのも、このようなことも要因の一つとなっているのかもしれません。
それに加えて競争は敗者にとってはとてもつらいものです。
もし競争に負けることが続くと子供は落胆し、自尊心まで低めてしまう可能性さえあります。
実はアドラー心理学でも競争は問題だとしています。
小学校で子供たちに競争を強いることの問題点をアドラーの弟子であったドラ―カースはこのように述べています。
平均的な能力以上の少数者にとってのみ、競争が報いのある経験なのです。多くの子供にとって、競争は学習を動機づける上で最もつたないやり方で、逆に落胆させるやり方なのです。落胆した子供は諦め、進歩する代わりに退歩します。
さらにドライカースは「子どもは勝敗を考えることにエネルギーを浪費してしまうでしょう。そうすることで、課題をやり遂げる力と可能性を徐々に弱めます」とも述べています。
どちらにしても競争原理は、問題がありそうです。
というか、大人でも、競争に明け暮れていると心を病んでしまうのではないかと思います。
できるだけ子供のうちは、競争原理は排除して協力して遊んだり勉強したり、そんな環境を作ってあげるのが望ましいのかもしれませんね。
参考図書
「勇気づけて躾ける―子どもを自立させる子育ての原理と方法
」ドライカース著
「人を伸ばす力―内発と自律のすすめ 」エドワード・デシ著