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仕て来いな。
やっちゃ仕て来い今夜の御供。ちっと遅れて出かけたが、
足の早いに、我が折れ田圃は近道、見はぐるまいぞや、合点だ。
振って消しゃるな台提灯に、御定紋付でっかりと、ふくれた紺のだいなしは、伊達に着こなしやっこらさ。
武家の気質や奉公根性、やれ扨ていっかな出しゃしょない。
胼や皸かかっとや臑に、富士の雪程有るとても、何時限らぬお使は、かかさぬ正直。
正道者よ、脇よれ、頼むぞ、脇よれと、急ぎ廓へ一目散、息を切ってぞ駆けつける。
おんらが旦那はな、郭一番隠れないない、丹前好み、華奢に召したる、腰巻羽織、
きりりとしゃんと、しゃんときりりと立股立の袴つき、後に下郎がお草履取って、夫さ、是さ
小気味よいよい六法振が、浪花師匠の其の風俗に、似たか。
似たぞ、似ましたり、扨々な。寛濶華麗な出立。
おはもじながら去る方へ、ほの字とれの字の謎掛けて、解かせたさの三重の帯、解けて寝た夜はゆるさんせ、
ああ、ままよ浮名がどうなろと、人の噂も七十五日、てんとたまらぬ、小褄とりやった其姿。
見染め見染めて。目が覚めた。醒めた夕べの拳酒に。
ついついついついさされた杯は、りうちえいぱまでんす。
くわいと云うて払った。貼った肩癖ちりちり身柱、亥の眼灸がくっきりと。
ねぢ切りおいどが真白で、手ツ首掌しっかりと握った。
石突、こりゃこりゃこりゃこりゃ、成駒やっことこよんやさ。
面白や、浮かれ拍手に乗が来て、ひょっこり旦那に捨てられた、狼狽眼で提灯を、
つけたり消したり灯したり、揚屋が門を行き過ぎる。