越後獅子 | 『花のほかには』-fuyusun'sワールド-

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fuyusunの『何じゃこりゃ!長唄ご紹介レポート』
自己満足ブログですみませんm(_ _)m

年代
作曲
作詞
1811年文化八年 九世杵屋六左衛門
篠田金治


化政文化は文化・文政の時代に発展した町人の文化です。社会や政治の出来事、日常生活の事などを風刺するような川柳が流行ったり、写楽・北斎など有名な浮世絵の作家たちが活躍したりしたのはこの時代です。

これから幕末にかけて暗い話題が多い世の中になりますので、江戸時代後期としては一番良かった年代ではないでしょうか。

九代目杵屋六左衛門は、三世田中伝左衛門の次男として誕生する。名前を万吉という。田中伝左衛門は歌舞伎囃子方の田中流宗家家元というお家ですね。つまりこの人は、囃子方から長唄の方に転向した方なんですね。

八世杵屋喜三郎の養子となる。が、八世杵屋喜三郎に実子が誕生してしまう。という事で、実子が九代目喜三郎を継承。万吉は九代目杵屋六左衛門を1797年に継承する。まあ、どちらも杵屋宗家(長唄宗家)の名跡。

「小糠三合あるなら養子には行くな」と養子の苦労の多いことの例えとして言われるけれど、せっかく養子に入ったのに・・・。でも、格としてはぜんぜん負けない六左衛門の名前を継承できてよかった。よかった。

この九世杵屋六左衛門は文化八年まで江戸中村座で活躍する。

篠田金治=二世並木五瓶。彼は1768年(明和五年)に旗本の野々山家に生まれる。野々山というお家は徳川家康が今川義元の元に人質に入っている時代からの家臣。由緒正しいお家です。きっとたぶん、次男以下の部屋住みの身の上だったのでしょうね。放蕩生活の末、初代並木五瓶に弟子入り。篠田金治を名乗り戯作者として活躍。1818年(文政元年)に二世並木五瓶を継承する。この曲のほか清元の『保名』などの作詞をしたりしている。


この曲は、越後の国(今の新潟県)から出稼ぎに来た角兵獅子のおじさんが主人公の踊りです。
角兵獅子とは、大道芸人で頭に獅子頭を被っておどったり、様々なパフォーマンスをする人です。
筝曲にも同じ題名のものがありますが、その筝曲の「越後獅子」がもととなっているそうです。
この曲について調べると面白い事がある本に載っていました。
実はこの曲、一夜漬けで作られたそうなんですよ。
江戸時代の芝居小屋で有名な中村座と市村座などがありました。
文化八年、当時の坂東三津五郎という人が七変化の踊りを出して、市村座が人気ナンバーワンの芝居小屋だったそうです。
それまで、人気が高かった中村座はお客の不入りが続いてなんとか人気を取り戻そうとして、当時の中村歌右衛門という人が自分も七変化の踊りをやろうという事で、「越後獅子」をはじめ他七曲を踊って人気を取り戻したそうなんですよ。
七変化というのは早代わりものです。
乙女を踊っていたかと思うとあっという間に厳つい男性に変身して踊ったりする。
パフォーマンス性の高い演目です。
当時の杵屋六左衛門という人が中村座から作曲を頼まれて一日で曲を完成させたそうです。
とにかく早くという注文だったんでしょうね。


当代坂東三津五郎は三代目のことです。

初代坂東三津五郎の子供で森田座にて子役デビュー。1799年寛政11年に三代目を襲名。当たり役は『伽羅先代萩』の足利頼兼、『一谷嫩軍記』の熊谷直実、『源平布引滝』の斎藤実盛など。四代目鶴屋南北と提携していて描き下ろしの芝居に出演していた。日本舞踊の坂東流の祖である。

また、ライバルであった三代目中村歌右衛門は、初代中村歌右衛門の子として1778年に生まれる。もともとは関西の役者。私たちの記憶に新しい六代目中村歌右衛門は屋号を成駒屋。この成駒屋の屋号は四代目から。三代目の屋号は加賀屋。1791年に三代目を襲名。二代目嵐吉三郎と人気を二分する人気役者となる。

1808年に江戸の中村座の所属となり、三代目坂東三津五郎と人気を二分するスターとなる。当り役は『一谷嫩軍記』の熊谷直実、『義経千本桜』の狐忠信、『仮名手本忠臣蔵』の定九郎、『楼門五三桐』の石川五右衛門、『隅田川続俤』の法界坊、『五大力恋緘』の弥助など。

二人の三代目は競って変化もの演じて庶民を楽しませたのだそうだ。

・・・ところで、中村歌右衛門というと女形の印象が強いですが、三代目は立ち役だったんですね。


ところで「越後獅子」というと、美空ひばりの歌で「越後獅子の唄」とかいうのがあるんです。
まだ美空ひばりの子供時代角兵獅子の女の子(男の子だったかな)の映画があってその映画の挿入歌。
角兵獅子というとこの映画もそうなんですけれど、その他、時代劇でも子供というイメージが強いです。
それなのに長唄の越後獅子は妻帯者のおじさん。子供じゃない。角兵獅子のイメージが…。
可愛くない。生活臭がする。オヤジ臭い。

なんか、私の角兵衛獅子のイメージを完璧に崩してくれちゃった曲。
なので私はこの曲ってあまり好きじゃありません。
でも、なぜかこの曲を演奏する事が多い。やっぱり一般的には人気の長唄の一つなんですよね。