キャンディの森 266話 テリィ物語 ケガだらけの青春 | キャンディの森

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キャンディキャンディの私的二次小説

「テリィの将来の事。。」
テリィはキャンディには何もまだ自分の将来の事は話していなかった。役者になりたい夢。。それはテリュースが幼い頃から描いていた夢だった。

「ああ、俺には夢があるんだ。」
「夢?」
「そのうち、わかるさ。」
「夢ね。。そうか。。私も考えた事なかったな。」
「でも父親が反対している。俺はどうしても父の束縛から逃れられないんだ。。それで頭にきてね。。」
「そうだったの。。でも愛しておられるからよ、テリィ。」
「愛?ふん、そんな事、あの親父が。。」
「自分の子供を愛さない親はいないわ。」
「そうかな、世の中にはそうじゃない親だっているぜ。君の親だってそうだったじゃないか!孤児院に預けるぐらいだ。ロクな親じゃない。だけど親なんていない方が羨ましいよ。いつももめてケンカして。。親子らしい会話なんてした事ない。」
テリィはキャンディの親がキャンディを棄てた事に触れてしまった事を少し後悔していたが酔っていた勢いで言ってしまったのだった。
「私も自分の親がどんな人だったのか何度も考えたけど、私を捨てた理由も考えたけど、わからないものはわからないし、要らないから捨てたとは思いたくないの。。せめて。。もしそう思ってしまったら、悲しすぎるじゃない。。そんな人生って。」
「ごめん。。余計な事を言ってしまったな。。」
「ううん、いいの。私だけではないもの。。ポニーの家の子たちはみんないい子よ。生まれた境遇は人と違うかもしれないけど、頼れない分、人には優しいわ。辛い思いもたくさんしているから。」
「人って不思議だ。そんな辛い目に遭うと、普通はいい人にはならないような気がするんだ。だけどそうじゃないだなんて。」
「それはポニー先生とレイン先生の愛情があるからよ。それとお祈りかしらね。」
「神さまか。。神様なんて人間の作り事だぜ。俺はちっとも信じちゃいない。」
「テリィがそう思うのは自由よ。。でも私は静かにチャペルで祈っていると、心がスーッと軽くなるの。」
「キャンディでも悩んだりするのかい?」
「あったりまえじゃない!私だって人間よ!」
「サルじゃないのか。」
「もう!包帯で締め上げるわよ!」
「イテテ!お手柔らかに頼むよ!」
「お父様は、愛情の表現が苦手なのよ、きっと。テリィを手放したくないのね。」
「いい迷惑さ。。」
「どう、気分は?」
「あぁ、頭が痛いが大丈夫だ。」
「ここに酔い止めの薬は無いわね。。」
「ゆっくり帰るよ。」
「動ける?」
テリィが歩き出した途端、崩れて二人ともこけてしまった。途端に二人の顔が近付いてしまった。
「キャンディ。。」
テリィはキャンディの身体に手を回した。
「ダメよ!ここは学校よ!」
「こんなところにそばかすが。。」
「もう!何よ!スケベ!早く起きなさい!」
その瞬間テリィはキャンディの腕を引っ張って抱きしめてキスをした。
「もう、テリィ!」腕を払いのけようとしたがテリィが泣いている。キャンディは傷だらけになったテリィを抱きしめた。
「テリィ。。私がいるわ。」
テリィはキャンディを抱きしめながら泣いていた。テリィはなぜなのか自分でもわからなかったがキャンディには自分をさらけ出せる気がした。

いい香り。。テリィはとてもいい香りがする。。生まれと育ちの良さがその香りから漂っていた。ポニーの家の子たちとは違う香りをキャンディはテリィを抱きしめながらそう感じた。どこに生まれるかで人生は大きく左右される事をまざまざと知ったキャンディであった。テリィの栗色の柔らかな髪、広い肩。。
「テリィ。。」
「このままでいられたら。。」
「。。。」
「このままでいられたら、どれほどいいだろう。。」
「なんでそんな事言うの?」
「いつか俺たちも大人になる。。自分の思いとは違う方へと進まなきゃならないのか、人生ってわからない事が怖いんだ。」
「そんな。。」
「ありがとう。。これ借りるぜ。。」

そう言ってテリィはシーツロープを手にして木を伝って部屋に帰っていった。後年、私は何度もこの時の事を思い出した。テリィは、人生が自分の思った通りには行かないという事を、大きな流れには逆らえない事を予感していたのだ。二人が別々の人生をたどる事すらもまだこの時はわからなかった。

朝になって、本当にテリィがいたのかどうかも嘘のように何事もなかったかのように思えた。ただ薬箱の中の包帯が無くなっている事が事実を物語っていた。


「なぁに、キャンディ、ぼんやりしちゃって。窓の外ばっかり見てるんだもの。」
「テリィは学校に行ったのかなって思って。。」
「ごちそうさま!キャンディ、テリィの事ばっかり考えてるのね!」
「そうじゃないんだけど。。」

キャンディは昼休みに走ってにせポニーの丘に行った。だがいくら待っても来なかった。
「テリィ、来なかった。。」
「ヘッヘッヘ!」
「ニール!」
「誰かさんを待ってるのかよ!お貴族さまは今日は授業には出て来られてないぜ!」
「テリィは休んでるのね。。あんたに教えてもらわなくても結構よ!」
「代わりに俺が遊んでやろうか。。おい!」
木の陰から不良たちが出てきた。
「この間の仕返しさせてもらおうじゃないか!」
「何よ!あんたなんか怖くないんだから!臆病者のくせに!」
テリィがいなくても戦ってやる!キャンディはそう思った。
「へっ!女のくせにいい度胸してやがるぜ!やっちまえ!」
3人で囲まれて手や足を押さえつけられ地面に顔を押さえつけられた。ぬかるみで顔がドロドロになり土が口の中に入ってきた。
「孤児院のお前がこんな学校で大きな顔するなよな!お前はドロドロの姿の方が似合ってるんだぜ。この貧乏女!アードレー家の財産がほしくて養女になったんだろ!姑息な奴め!」
「何よ!どんなに暴力されても、私は私よ!言いたければいくらでも好きに言うがいいわ!」
「殴れ!」
「。。。」
「おい!殴れよ!」
不良たちは殴らなかった。キャンディはドロドロになって惨めな姿になり髪の毛はリボンがほどけて千切れていた。
「おい、これ以上やったらやばいぜ。。俺たち退学になるの嫌だぜ。。ニール!お前がやれよ。。」
「何だよ!このニール様が命令してるんだ!」

とその時ニールは後ろから首根っこを掴まれ、思い切り殴られた。
「ひぇっ!テリュースだ!失せろ!」
仲間の不良たちは怖がって逃げていった。

「よう、ニール!貴様よくも逃げなかったな。。なかなかいい根性してるじゃないかよ!」
テリィはニールを殴り続けた。
「まだわかんねぇのかよ!このゲス野郎!」
ニールは唇を切り血が流れている。
「ご、ごめんなさい!許してくれ!」
「許さない!お前が死ぬまで殴ってやる!」
「ひぇぇ!助けてくれ!助けてくれ!二度としない!約束する!」
テリィは足で思い切り顔を蹴飛ばした勢いでニールの歯が折れた。
「ヒェーー!」悲鳴をあげて逃げていった。

「テリィ!大丈夫なの!あなたケガをしているのに!」
「言ったろ、俺は君を守るって。。」
テリィは足を引きずって助けに来たのだった。
「でもどうして分かったの?」
「あいつらがヒソヒソと話しているのが部屋の中から見えたんだ。にせポニーの丘の方に行ったから、もしかしてと思って。。」
テリィはキャンディの顔の泥を拭ってやっている。
「そばかすがドロドロだ。」
「テリィ!」
テリィは泥だらけのキャンディを抱きしめた。
「このまま、院長室へ行くぜ。」
「えっ?!」
「当たり前だ!あいつらを許さない!」


ドロドロになったキャンディとテリィはそのまま学院の院長室へと歩いていった。
「なっ何ですか!あなた方のその格好は!!」
「グレー院長!キャンディが暴力されたんです。」
「キャンディが?」
「ええ、犯人はニール・ラガンの一味です。複数人でキャンディを囲み暴力をはたらいた。」
「あなたは見ていたのですか?」
「俺は彼女を助けに行きました。」
「何という事。。!ニール・ラガンと言えば、アメリカの大富豪の息子ではありませんか。。」
「金持ちであろうと貧乏であろうと奴のやった事は犯罪だ!退学に処するべきだ!」
「テリィ、もういいのよ。。」
「キャンディ!ダメだ!この黒幕はイライザに決まってる!」
「テリュース!下手な勘ぐりはよしなさい。」
「あんた、キャンディには冷たいがラガン兄妹に甘いっていう噂は本当なのか?」
「何が言いたいのです。。」
「俺は聞いてるぜ、親父に多額の寄付金をもらってる事をな!ラガン家からも寄付金をもらってるんじゃねぇのか?」
「お黙りなさい!テリュース!そんな事があ、あるはずがないでしょう!口を、口を慎みなさい!」
「ふん、汚いカネまみれのグレー院長か。。名前通りだな!ニールを罰さないとしたら親父に寄付金をストップさせる!」
「わかりました。。すぐにニール・ラガンを呼びましょう。。部屋に戻りなさい。。キャンディス!保健室で手当てをしてもらいなさい。。」

後日、ニールとその一味の不良は反省室送りになり、今後おなじ事を起こしたら退学処分になると警告された。

「イライザ!ニールが反省室だって!」
「ふん!キャンディがシスターグレーに言いつけたのよ。。覚えてらっしゃい。。このままじゃおかないわ。。」