そこから5年ほど経って
私もいくつかの恋愛をして
彼も結婚をして父親になり
そして、ある時の飲み会に彼がいて
帰り際、
方向違うのに「こっち方面だから」と
なぜか私と同じ電車に乗って
私を送り届けてくれた家の前で昔の話をした。
「俺、あの時、初めて母親に殴られたんだ…
“あんな小娘と遊んでるんじゃない!”って。
俺は真剣に付き合ってたんだけどな」
ただ懐かしんでいるだけなのか、
それとも思い出して少し悲しかったのか、
はたまた私に対する詫びなのか。
それを教えてくれた時、何も返せなかった。
言いたいことはいっぱいあったけど、
今のお互いの状況を考えた時、
それが、言っていいことなのか悪いことか
瞬時に区別することが出来なかった。
「じゃあね、おやすみ」と手を振って
背中を向けた彼に照らされる車のライトが
とても眩しくて。
大好きだった背中を少し見続けた。
そして一度振り返って、
手を振ってくれた姿を今でも覚えてる。
家に帰ったら、涙が止まらなかった。
どんな意味の涙だったのかなぁ…
作り話ではない本心が聞けたことに安心したのかな。
本当は追いかけたかったし
泣き崩れたかったし
今でも想いは消えてないって言いたかったのかな。
別れ際「素直じゃないと可愛くないよ」と
言われた。
あの瞬間、彼の前で、一番素直な自分を出せたら
どんなに楽だったか…
そんな言葉を言われた
ちょうど5年後の同じ日に
彼は亡くなりました…
5年前倒しの遺言になっちゃったね。
もう20年以上経つのかなぁ…
今日がその命日。
急に思い出した。。