妹が実家にいったときに、ある女性から声をかけられた。実家はそのょっと前に、庭の草ぼうぼうをシルバーさんに刈ってもらい、防草シートもかけたとこであった。母が作った畑も鉢植えもすべて消えた。

 

 そうしないとご近所迷惑になるので、こうするほかなかった。その全部店じまいふうの様子と、ふだん人が住んでない様子、しかも意外と新しく見えるその空き家に、その女性はここしばらく注目していて、この家の関係者がこないかずっと来ては見張っていたのだそうだ。

 

  妹の話だと、そのかたの息子さんがこのたび新宮にもどってきて消防署に勤めるのだが、結婚していて子供も生まれるし、家を探しているのだそうだ。10月までに探したいのだそうだ。それで、妹が僕に電話してきて、貸してやろうかこの際という。人が住んでないとたしかに傷む。母は兵庫に来てプレザンメゾンに入ってしまったから、妹も新宮に家を開けるためだけにいくのもしんどく、どっちかというと兵庫にしばしば母に会いに行きたい。妹が名古屋の大学の職を定年したら住みたいと言っていたので、一度貸すと、いいタイミングで出てくれないかもしれないがという話などもしたが、いろいろ話ているうちにこうなった。

 

 ---- 貸すにしても売るにしても、母が認知症がヘビーにならないうちに名義を誰かにしておいたほうがいい

 

 名義変更誰にするかというと当然僕である。弟も妹も、嫁にいた姉も、ごめんこうむり隊ばかりで、これは僕が受けるしかないと思え、兄弟の話し合いの結果、僕に土地と家を名義変更することになった。それがアホのはじまりであった。司法書士さんにいろいろ教えてもらいながら、手続きをすすめ、けっこうな金もかけて、名義変更した。手続きの途中で母が入院し、もう終わりかなという時があり、名義変更ではなく相続にかわるかなと思たりもした。結局母は回復し、名義変更はとてもややこしい手続き(以前に建っていた平屋のままの登記になっていたとか、母が山林を持っていたとか)を経て、めでたくこれらは僕の名義になった。

 

 司法書士さん曰く、

 

-------年度末ごろに、相続時精算課税の手続きを忘れずに。

 

    へえ、なんですかそれ?てわけだ。”贈与税は高いので、それを使わないと払わされますよと。”そうなんですか。しらなかった。というように、こういうことをわかっている人からしたら、完全な馬鹿を僕はやっていたわけだ。

 

   司法書士は、私に兄弟がいることをあんまり意識してなかった。しかし、兄弟がいて、彼らがけっこう母から生前贈与受けていることを伝えると、あわてだした。たしか妹は、そういう制度を使ったとかいっていた。いろいろ調べて確認して、司法書士は、

 

---- 兄弟みなさん合算で2500万までが相続時精算課税制度適用の限度です。

 

 妹だけだろう、そんなの使ったの、と僕は思っていた。しかし、あとで姉にきくと、実は姉ももらっていて相続時なんちゃらをやっていた。新築のときもらったという。合算すると2500は越えていた。つまりこうなる。私は、自分が要りもしない、しかしみなさんがめんどくさくないように名義を自分の土地と家にするということをやったあげく税金を払い、連中はいろいろと金をもらって免税(相続時に結局支払うのですが、それは相続税ということになり、つまり贈与税よりは全然安くよほどじゃないと普通0)になる。ということが判明し、司法書士がだんだんやばい顔になってくる。ある意味誠意のある人だ。

 

 僕は余裕かまして、----へえ僕はいくら払えばいいので?

 

 書士の先生は、いろいろ調べて、実は実家の路線価の倍率がかかって、あそこが新宮の一等地でけっこう地価もあって、評価額が高いということをつきとめ、たぶん税金は250万以上といい、自分はお客さんの兄弟が相続時精算課税を使ってないか、まだわくがあると思っていたという。あとで妹にきくと、お金をもらったとき、母がそういう制度を良く熟知していて、妹に手続きさせたのだそう。もちろん施設にいる現代版の母にきいてみても、そんなもん全然わからんと、うれしそうに笑顔をみせてくれる。かくしゃくとした当時の母は、金を増やす、倹約する、いろんな手続き、すべて一人で天才的にやってのけ、自分がプレザンメゾンのような費用のわりとかかるところに暮らしていけるだけの金を作り、こうして子供らにけっこうな金を生前贈与したりしてきたのであった。

 

  しかし、これで僕は年度末に250万出費を強いられることになる。250ためるのに何年かかると思ってんだの世界だ。この税金やろう、の世界だ。俺の乗っているミライ―スなら2台買える。司法書士の先生は、これは土地だけでも名義もどしたほうがいいのでは、という。こんなん払う人見たことないですよ。ともいう。高い金を払って名義変更して、また金使ってもどす?あほか。相続ならば、おそらく免除される学なのに、贈与だととられるのだ、そういう税金のしくみだった。あほなのでこんなことも知らなかった。そのため、大急ぎでいろんな本を読み、ネットググりし、付け焼刃で情報を仕込むと、

 

そのとおりです!!。あなたはそれを支払わねばならない。

 

 贈与は要注意なのだ。しかし大丈夫相続時精算課税を使えばいいと書いてある。それが使えないから困っているのだった。使えなくなる条件が書いてなかった。おそろしいことに流石の司法書士さんもあんまりわかってなかった!???ほんまかいなだね。

 

  ということで、このたび、土地の名義をもどそうと思う。そして貸すのも、やめようかなと思い始めた。どうも兄弟も好き勝手なことを言っているだけのようにも思えてきた。彼らはテレビ買ってやれと繰り返して言った。しようがないので買ってやった。まったく見ていない。もうテレビ番組わからない。本も読めなくなっているように見える。笑顔だけ素敵とよくいわれている。母は今は紙風船で僕と遊ぶのが好きな子供なのだ。よく考えているのはもはや私だけなのであった。みんな肩の荷を下ろしている。こういうのがもめごとのはじまりなのか。僕は母の遺産など放棄するつもりでいたのに、面倒な世界だ。今日、下の本で勉強してだいぶいろんなことがわかった。とにかく僕は、あほなことをやったということがはっきりとわかりました。これがいわゆる勉強代だ。とはいえ、今回のことで実家の登記が正常にできたこと、どういうふうになっていたか、いろいろわかった。こういうことを必死で勉強しておかねば、思わぬ落とし穴がある。ぜんぜん興味のない分野だが死活問題ゆえに。つづく