新宮のほうでお世話になったケアマネのKさんからよく聞いていた、施設は難しい、と。

 

  まず空きがない。だからこれはというところがあったら予約して待ちをいれてもらう。人気のところは10人以上待ちとなる。都会の特養などは100人待ちとか、空くのはいったいつなんだ。となる。

 

  待ちを入れる。つまりそれは誰かが死ぬのを待っていることなのだ。待ちを入れて、ときどきもう空きましたか? あと何人ですかと聞く行為は、誰か死にましたか、早く誰か死にませんか、と催促している行為なのだ。隠された真実がそこにはある。僕は半年の介護施設探しで思い知らされることになった。季節の変わり目に体調壊される人が多いので、そろそろとか、そういう恐ろしげなことを冷たく考えながら、あと10人というけれど、季節がこうなので早く回ってくるかもしれないですねとかいいながら。恐ろしいけれどこういうことになる。金もかかることでもあるし、どれくらいの金があればどういうことができて、あと何年生きていそうだから破綻しないはずとかいう計算をしなくてはならないのでした。弱っていく母が、曾孫と風呂に入れたといっては喜んでいる姿を見ながらも、僕は冷静にいろんな計算をして、どこがいいか探していなくてはならなかった。

 

 いい施設はすぐうまってしまい、空くと一週間で決めて入居してくださいとか言われ、どうしようかもたもたしているうちにチャンスが通り過ぎて終わり、次の他のあきを待つといった、そしてチャンスを逃がしたあとは、他のが空くのがなかなかまわってこないで、あのとき入れときゃよかったという後悔をしたりして、ほんとずっと悩んでいる世界に僕はそのころ突入していた。

 

 いろいろなところを見ているうちに、母にとって何が必要か基準がはっきりしてきた。

 

1 まだコロナなのだけれど、いち早く面会制限撤廃しているところも出てきている。母はそういうとこに入ってもらう。

 新宮からはるばるここにつれてきてしまったのに、面会もできないなどというのは無意味である。

 

2 母の状態からすると、まだみんなとしゃべれたりするくらいのほうがいい。にぎやかにやってる風のとこに入れたい。

 

3 サ高住よりも有料老人ホームにしようと思った。サ高住にしてケアマネといっしょにいろいろなサービスの計画を練り続けていくのは難しいと思ったからだ。新宮市のほうでお世話になったケアマネさんがよすぎたというのもあって、あんな人にこちらで巡り合えることは難しいと思った。すこし高くてもそこの施設のケアマネがいて計画してくれ、介護もあって、かつ看護師もいるところ、医者の往診もあるところ。新宮から書いてもらってきた紹介状をたくせる、その施設に力をいれてくれている医者がかかわっているところ。これは異論もあるだろうが、僕の結論としてそうした。たつのでいいケアマネに会っていたら事情は違っていたかもしれない。

 

4 介護2なので特養はなし

 

 施設長なりに会ってみて、どうもこの施設の施設長さんは人間としてどうだろう、と思ってしまうとこはやめた。実際そういう人もいた。見学にいって、挨拶がないところとか、スタッフが疲れている感じとかも、問題と思った。

 

 などということをやっていると、結局納得でいるところはなかなか見つからず、半年すぎてしまったのであった。母の大便失禁率が上がり、そのたんびに掃除して洗って拭いて風呂入れて、とかやることになっていっていた。それにデイサービス毎日はさすがに本人も疲れてしまうので、毎日ともいかず、家ですごしていても私はもうしんどいので、と寝てしまい、医者の診断としても廃用症候群にはなっているので、このまんまどんどんダメになって、どんどん手がかかり、私が昼間仕事していることにより妻に負担もかかり、といった悪循環がもう見えてきていた。

 

  姫路のA介護老人ホームを見に行ったのだが、そこはみなさんにぎやかにしていて、スタッフの元気な声もあふれていた。いろんな施設を見ても、なにかみなさん沈んだように過ごしているように見えたので、ここはいいかもと思った。看護師もいるし、往診もある。おおきな食堂ホールにみなさんさそいあって行くそうで、また誰も孤独にしないために、スタッフのミーティングでこのひととこのひと近づけてみようとか、いうことをやっているという。なるほどそういうことが行われているのか。ちょうど食堂で見ていると、なにか若い女性の人が入ってきて、テーブルで集まっている人たちの中に入っていく。絵手紙教室だそうだ。そういうボランティアとか講師とかきてくれるとこなんだな。こういうのもいままで見学したサ高住とかにはなかったな。

 

  ここにしようと思った。7人待ちだった。だいぶ空くのは先ですかときくと、順番まわってきてときに、まだもうすこし考えますといってキャンセルも多いので意外とすぐきますという。まちを入れた。

 

  ところが何か月たっても順番は回ってこない。きいてみると、意外なほど皆さんお元気で動きが止まってます(正直下世話にいうならば、死なない)。となる。100人以上いる施設であったけれど、みなさんおお元気であったということ。それは喜ばしいことなのだかれど、僕はそうも言っていられない。

 

  というわけで、ふたたび、ネット検索でみつけたケアフル介護であるとかみんなの介護であるとかいったところに、この界隈でいいところを紹介してくださいと頼むことになる。 (つづく)