ただの偶然の責任。ディン・Q・レ展 | 現代アート思考でビジネスを変革する「メタ・アーチング」

現代アート思考でビジネスを変革する「メタ・アーチング」

今の時代、普通のビジネスだと埋もれてしまいます。
アートを活用しながら、ビジネスに必要な創造性を高めて、付加価値をつけた高額商品の開発、セミナーセールスの設計、コンサルタントを行う「メタ・アーチング」を提供。

今日はディン・Q・レ展を観ました。
ああ、ぐっさり刺さる作品たちに虚脱感。

作品名《抹消》
大きな展示室が一つの作品になっていて、鑑賞者は作品の中に入り込んで見ることになる。

海、もしくは砂浜に見立てた床の上には無数の写真が裏返してばらまかれている。

そのうえに転がる難破船、石、流木。
壁一面のスクリーンには燃え上がる帆船の映像。

薄暗い部屋のなかを練り歩きながら、燃え上がる帆船のきしむ音が鳴り響き不安感が沸き起こる。

床に敷き詰められた写真の中から1枚の写真を選ぶように作者からの指示があるので、私は足ものと写真を何の気なしに選び、表にかえした。

その時の衝撃。

写真は2人の女性が微笑みを浮かべて、滝の前に立っている。記念写真なのか?

この二人は誰?
この二人はどういう人生を送ったのか?
難民になり、ボートの転覆で海の藻屑となったのか?

色んな問いが一瞬で私の頭のなかをぐるぐると駆け巡る。

さっき、1枚の写真を見るまでは全く私と接点がなかった2人の女性。
私が選んだ訳ではない。
ただの偶然で選んだ写真だ。

しかし、私の中に沸いてくるこの女性たちへの執着はなんだろう?

本来、私が見るはずもない、見てはいけないプライベートな写真。
二人の秘めやかな人生。

ただの偶然なのに
私が写真を見た瞬間から、この二人は私と赤の他人ではなくなった。

「責任」とはなんだろう?

虚脱感。
泣けてくる。

ディン・Q・レ展
http://www.mori.art.museum/contents/dinh_q_le/