東京バレエ団の「くるみ割り人形」、東京での5組の公演が終了した。

私が観たのは23(土)12:30-  足立真里亜・大塚卓ペアのみ。

急成長中のこのペア、のびしろが多いから毎回楽しみだ。圧倒されるようなプリンシパルの踊りも大好きだけど、こういう可能性を感じる人を見守っていくのも好き。

 

5組で上演できるだけの人材がいるということは、観客としても楽しみだけれど、当人にとってはなんといっても場数を踏むことが成長へとつながると思う。

そのためにも公演数を増やし、観客をもっと増やすには、こういうポピュラーな演目に関しては、ネット配信ももっと積極的に取り入れてほしいなと切に思う。

来年の白鳥キャスト発表にも驚いたが、東バの新たな挑戦に期待したい。

 

東京バレエ団の金森穣版「かぐや姫」全3幕を観た。

(10.21. Bキャストのみ)

 

日本のバレエ団の観客には、コンテンポラリー作品を好まない方が多いからか、バレエ団オリジナルのコンテ作品の定着は難しいようだ。

そんな状況でもベジャール作品のファンは多く、その上演を許されている東バが、ベジャールやイリキリアンに師事していた金森氏に作品を委嘱したのは大正解だったと思う。

 

ただ初演の第1幕を観たときには、グランドバレエに仕上げるには日本昔話風になってしまうのかと少々ガッカリしたが、 その約1.5年後に第2幕を観たら、全くテイストが変わっていてまるで現代オペラの舞台のような世界観になり、驚き安堵した。だがそこからわずか半年で新たな第3幕含めどうやって全幕を繋いでいくのか、あまりにも無謀な挑戦と思えた。

 

そして幕を開けたら、第1幕の装置や衣裳が様変わりし、別作品に生まれ変わっていた。

シンプルで近未来的なセットと衣裳に引き込まれた。

特に第3幕は壮大なスケールで描かれ、光の精が創り出す世界に神々しく存在するかぐや姫の美しさは感動的だった。

 

3年かけて全幕を作り上げるという贅沢もさることながら、こんなにも大胆に創り変えるには、金森氏の最後まで諦めない覚悟、当然ながら費用も時間もかかることを受容してくれたバレエ団の懐の深さ、そして何よりダンサーとスタッフの心意気と底力。そうした全員が一丸となって未だ観ぬ作品を生もうとするエネルギーこそが、舞台芸術の醍醐味だろうと思う。

 

時間を追うごとに、多くのダンサー達の成長がみられたが、特にかぐや姫の足立真里亜はまさにこの作品と共に役を生き、大きく成長したと思う。

この作品が何度も再演され、広く愛される作品となり、ますます進化・深化していくことを願っている。

 

「バラ色ダンス純粋性愛批判」(構成・演出・振付:川口隆夫)

8.11に観た。(於:シアターΧ)

ザ・アングラ!なパフォーマンスに久しぶりに立ち会った気がした。

 

開演前、床に並んで転がっている2つの裸体。赤いテープで全身を覆ったオブジェのようなからだ。そこで平和にバトミントンを楽しむおぢさんたち。すっかり空間は出来上がっていた。

 

60年代を駆け抜けたアヴァンギャルドな舞踏家・土方巽の初期の代表作「バラ色ダンス」を出発点にし20代〜80代で創り上げた作品。

スーザン・ソンダクが提唱していた「キャンプ」がキーワードになっていた。

次々と繰り広げられるシーンを全力で本気で遊ぶからだ。明るい中にもふとやるせない表情が垣間見えたりして、カオスは増大していく。

からだは正直に残酷にその人を晒すが、ペロッと差し出したそのからだに秘めている大きなエネルギーがアヴァンギャルドの底力なんだろうと思った。

 

ドラマトゥルク(呉宮百合香)の役割も、これからのダンスやパフォーマンス公演に大切な存在となるだろう。