東京バレエ団の金森穣版「かぐや姫」全3幕を観た。

(10.21. Bキャストのみ)

 

日本のバレエ団の観客には、コンテンポラリー作品を好まない方が多いからか、バレエ団オリジナルのコンテ作品の定着は難しいようだ。

そんな状況でもベジャール作品のファンは多く、その上演を許されている東バが、ベジャールやイリキリアンに師事していた金森氏に作品を委嘱したのは大正解だったと思う。

 

ただ初演の第1幕を観たときには、グランドバレエに仕上げるには日本昔話風になってしまうのかと少々ガッカリしたが、 その約1.5年後に第2幕を観たら、全くテイストが変わっていてまるで現代オペラの舞台のような世界観になり、驚き安堵した。だがそこからわずか半年で新たな第3幕含めどうやって全幕を繋いでいくのか、あまりにも無謀な挑戦と思えた。

 

そして幕を開けたら、第1幕の装置や衣裳が様変わりし、別作品に生まれ変わっていた。

シンプルで近未来的なセットと衣裳に引き込まれた。

特に第3幕は壮大なスケールで描かれ、光の精が創り出す世界に神々しく存在するかぐや姫の美しさは感動的だった。

 

3年かけて全幕を作り上げるという贅沢もさることながら、こんなにも大胆に創り変えるには、金森氏の最後まで諦めない覚悟、当然ながら費用も時間もかかることを受容してくれたバレエ団の懐の深さ、そして何よりダンサーとスタッフの心意気と底力。そうした全員が一丸となって未だ観ぬ作品を生もうとするエネルギーこそが、舞台芸術の醍醐味だろうと思う。

 

時間を追うごとに、多くのダンサー達の成長がみられたが、特にかぐや姫の足立真里亜はまさにこの作品と共に役を生き、大きく成長したと思う。

この作品が何度も再演され、広く愛される作品となり、ますます進化・深化していくことを願っている。