松山バレエ団による 新「白鳥の湖」を観た。(2024.5.3 於:オーチャードホール)

 

私が子供の頃初めて観たプロのバレリーナが森下洋子さんであり、自分の部屋のあちこちに写真を貼っていたのが懐かしい。75歳の現在も古典の全幕を踊り続ける孤高のバレリーナを久しぶりに拝見した。

 

舞台に立っただけで放たれる圧倒的な存在感。舞台映えする愛くるしい小顔と目力。あの独特の絶妙な首の角度に腕のライン。それらのフォルムにはさらに磨きがかかり、力強いエネルギーを放っていた。

 

日本のクラシックバレエ人口も増え、テクニックの上達が著しい若いバレエダンサーが多くなった昨今だが、あえて「引き算の美学」でどこまで古典バレエを魅せられるのか、そんなことを考えさせられた。

 

私も超絶技巧は決して嫌いではないが、何気なく上げた腕、移動するその一歩に、彼女が背負ってきた精緻でエレガントな気高い時間が感じられ、「舞う」ことの原点を突きつけられたような気がした。

やはり「ザ・森下洋子」は唯一無二の存在と思う。