アドラー心理学の『共同体感覚』が耳に痛い① | 癒快堂・ヒーリングセンター

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 なぜかこの頃アドラー心理学の本を読み返しています。若い頃、読んだ中で唯一引っかかっている部分が、アドラー著『人はなぜ神経症になるのか』の中で、うつ病患者への治療で、第1段階では「あなたにとって気持ちのいいことだけしなさい」と助言し、第2段階で「どうすれば他の人に喜びを与えることができるかよく考えて」というくだりです。「気持ちいいことをする」「人に喜びを与える」この2点が、神経症患者だけでなく、人が生きていく上で重要なことのように思い、記憶に残っていました。

 

 第1段階の「あなたにとって気持ちのいいことだけしなさい」は操体の「気持ちよさでと良くなる」という基本哲学があり、自分の中にしっかり根付いており大いに賛同でき、第2段階「他の人に喜びを与える」という視点が、自己中心的な私には大いに欠落しており、このくだりが大いに心に残りました。

 

 今回久しぶりのアドラーブームになって、一番の収穫は共同体感覚という概念が理解できたことです。自分への関心ばかりで、他者への関心が薄すぎた為か、若いころは共同体感覚というキー概念が引っ掛かりませんでした。今回ほぼ積読状態だった岸見一郎著『アドラーを読む 共同体感覚の諸相』を読んで、ダメな自分のところをグサグサ言ってくれており、大変感銘を受けました。以下抜粋。

今回の本はどちらかといえば「他の人はあなたの期待を満たすために生きているわけではない」といわなければならない人を念頭に置いているということができる。それゆえ私の話はそのような人にとってはひどく耳障りに聞こえるかもしれない。

 共同体感覚という概念は自己中心的な人間には劇薬を処方するようなもので、こころが痛みます。

 

共同体感覚は、他者の存在を認め、他者にどれだけ関心を持っているかの尺度である。さらにいえば、精神的に健康な人は、他者が自分に何をしてくれるかではなくて、自分は他者に何ができるかということに関心をもっているのである。

 中略

アドラーは「共感」を重視する。共感ができるためには、相手と自分を同一視し、この人ならこの場合どうするだろう、といわば相手の関心に関心を持たなければならない。このような意味での共感は容易なことではないが、これが共同体感覚の基礎となるものである。

 なぜこの共同体感覚が欠如してしまうかとういと(原因論ぽくなってしまうけど)、子供時代に甘やかされたことに起因しているとしています。

母親があまりに度を越して子どもを甘やかし、態度、思考、行為、さらには言葉において協力することを子どもにとって余分なものにすれば、子どもはすぐに『パラサイト』(搾取者)になり、あらゆることを他の人から期待するようになる。常に注目の中心に立ちたいとせがみ、他のすべての人を自分に仕えさせようと努める。自己中心的な傾向を示し、他者を抑圧し、常に他者に甘やかされ、与えることではなく取ることを自分の権利と見なす。このような訓練を一、二年も続ければ、共同体感覚と協力する傾向を発達させるのを止めるのに十分である。

このようなような子どもたちは、ある時は他者に依存し、ある時は他者を抑圧したいと願うが、共同体感覚と協力を要求する世界からの克服できない反対にすぐぶつかることになる。幻想を奪われると、甘やかされた子どもたちは、他者を責め、常に、人生において敵対的な原則だけを見出す。

 こうなってしまうと他者は協力すべき仲間ではなく、敵になってしまいます。他者への関心はなくなり、自分のことしか考えられません。当然、他者に貢献することなど出来ないので、共同体の中に入ることはできません。

 

居場所がある、所属感があるということは、人間最大の欲求である。他者を仲間だと思え、共同体の中に自分の居場所があると、と感じたい。

 回りの世界がすべて敵であれば、とても孤独だと思います。逆に自分は共同体の中の一部で、他者は仲間だと思えればこころ安らぐと思います。共同体の一員になるには、共同体に対してなにか貢献しなけれなりません。共同体感覚の基礎は「他者の関心に関心を持つこと」とありました。ではどうすれば自分への執着がつよい人間が、他者へ関心を持って、貢献することができるのでしょうか?

 

 自分から目の前の他者へ尊敬と信頼を寄せるという態度で接することで、他者との共同体へ参加するきっかけとなるのではないかと考えました。誰も自分のことを尊重してくれて、尊敬と信頼を示されれば悪い気はしません。

 

 アドラー心理学では「共同体感覚」と並ぶ主要概念の「勇気づけ」では相互尊敬、相互信頼の関係性が重視されています。相互尊敬と相互信頼の関係性で勇気づけが自然に行われるとされています。始めの1歩として、まず自分から他者への尊敬と信頼を心掛けて、共同体感覚を身に着けていきたいものです。

相手からどういう反応が出てくる分からないが、より早く、より多く尊敬・信頼しよう!

 

岩井敏憲著『勇気づけの心理学』