大阪市の一等地にあるマンションの一室が、その風俗店の待機部屋だ。20歳前後の女性たちが試験勉強したり、お菓子を食べたり。予約が入ると従業員に客の特徴を聞いて、バッグを手に部屋を出る。

 短大2年の女性(20)もその一人。高卒より上の学歴があれば、大きな企業に就職して貧困から抜け出せるのではないかとログイン前の続き期待して短大へ進んだが、資金的にも精神的にも行き詰まり、週2、3回、働いている。

 嫌だったが、お金が欲しかった。「貧乏なのに進学した罰」だと思った。

 幼い頃、小さい会社を経営する両親と裕福に暮らした。小学生のとき両親が離婚。母親と2人暮らしになり、生活保護を受けた。母は代わる代わる男性を家に連れ込んだ。親をあてにできず、高校の学費は食品会社の箱詰めなどのアルバイトで賄った。学費の心配に目をつむって進学した。

 短大の学費は年間約120万円。入学前に必要な費用は親戚や知人に借りた。学費の大部分は有利子の奨学金をあて、交通費や教科書代、生活費と借金の返済は、居酒屋のアルバイト代だけが頼りだった。

 午前9時前には学校へ行き、終わると午後6時から午前0時まで働いた。土日も夏休みも入れるだけシフトに入った。時給は約1千円で月約7万~10万円。バイト仲間からカラオケに誘われても、「明日も早いから」と断った。

 授業の合間に勉強し、いくつか事務系の資格を取った。参考書代や受験料は計数万円。未来への投資と思い、生活を切り詰めた。 進学から数カ月。息苦しい生活に限界を感じるようになった。居酒屋に飲みに来る学生を見てはお金と時間が欲しいと強く思った。

 もっと時給の高い仕事はないかとインターネットで探し、風俗店の求人を見つけた。「簡単な仕事」「嫌なことはしなくて大丈夫」「学生さんも多数在籍」。考えてもいなかった選択肢が、急に現実的に思えてきた。数日悩んで体験入店。つらさより、居酒屋1日分のバイト代を1時間で稼げたことに驚いた。

 就職活動のため時間とお金がより必要と考え風俗に絞った。直後に、インターンシップ先の評価は一緒に行った同級生の方が高かったと知った。その子は自分より裕福だった。自分でも驚くほどむなしくなった。 立ち止まる余裕はないと焦りながら、日銭を受け取ると、「ま、いいか」と思ってしまう。そんな日が続いた。常連客に就職活動のことを聞かれても、「うまくいってないんです。誰かお金持ちのお嫁さんになります」とはぐらかした。

 「卒業したら風俗はもうやらない」。そう自分に言い聞かせるが、就職先はまだ決まらない。 (後藤泰良) 


■「学費下げ、給付奨学金を」

 風俗店で働く女性らを支援する一般社団法人「Grow As People」代表の角間(かくま)惇一郎さんは「病気や育児、就活などで短時間しか働けない女性が生活費を稼ごうと思うと選択肢は限られる」と話す。一時的でも風俗を仕方なく選ぶ女性もいるという。

 角間さんは「行政の支援は個々のニーズに対応しきれていない面がある」と指摘。「住居や託児所などを用意する風俗店もあり、一部の困窮した女性にとってセーフティーネットになっている」とみる。特にここ数年は風俗店で働く学生が増えているといい、「風俗以外の現実的な解決策を社会が用意する必要があるのではないか」と話す。

 中京大学の大内裕和教授(教育社会学)は「学生に学ぶ時間を提供できない教育政策に問題がある」と指摘する。経済協力開発機構(OECD)の加盟34カ国中、半数の17カ国が大学の授業料を無償化。日本は有償の国の中でも授業料が高額な部類に入るうえに唯一、国による給付型の奨学金がない。「日本の高等教育予算は先進国最低。親の所得に関係なく学べるように、諸外国並みに学費を下げ、給付型奨学金を導入すべきだ」と話す。

参考URL:http://digital.asahi.com/articles/DA3S12015961.html
 安保法制反対の国会前デモで、「安保法案に反対する学者の会」の呼びかけ人として何度もマイク を握ったのが、水島朝穂早大法学学術院教授だ。若者が自立して行動を起こし、全国に伝播した反対の声は、「憲法を破壊した安倍首相でも壊せない」と訴え る。法案通過後、国民に求められている行動とは?

――法案成立後、ヒトラーの言葉を引用して、反対運動を続ける大切さを訴えられていましたね?

「わが闘争」に、「大衆の理解力は小さいが、その代わり忘却力は大きい」「宣伝はこれに依拠せよ」というくだりがあります。安倍首相はヒトラーの言葉通り、忘却戦術を取ってくるでしょう。

――新3本の矢とかアベノミクス第2ステージとか内閣改造の話題とかで、けむに巻いていく。安保法案のことなんか、過去の話題にしてしまう。


 改憲を狙う権力者たちは閣議決定による解釈改憲で、集団的自衛権の行使容認と地理的概念を外し た自衛隊の海外展開を可能にしました。しかし、国民の反対運動を見て、「やばかったなあ」と実は思っているのではないか。だからといって、彼らは明文改憲 をあきらめたわけではない。国民の慣れ、思考の惰性に期待しているのです。

――立憲主義を否定した乱暴な政治手法が、いつの間にか定着してしまう。怒りを忘れて、それが日常になってしまう?

 そうです。実際、来年度予算で防衛省は何を買うんですか? F35、オスプレイ、水陸両用強襲輸送車など、専守防衛から海外遠征型にシフトしているのは 明らかです。米豪軍などとの演習を見れば、尖閣などの島嶼防衛とは明らかに異質な攻勢作戦を想定していることが疑われます。国民が知らないうちに装備が変 わり、予算がどんどん膨らんでいく。法案成立の真の危うさは、今までできなかったことが国会のチェックもすり抜け、国民も知らないうちにどんどん拡大して いくことです。消費税が10%になり、福祉予算が削られ、防衛費が青天井になる。

■遠からず、米軍のために自衛隊の犠牲者が出る

――そういえば、参院特別委員会では共産党が暴露した防衛省の内部資料によって、制服組の暴走が明らかになりましたね。

 昨年12月中旬、河野克俊統幕長が訪米して、米国の統合参謀本部議長や陸軍、海兵隊のトップ、空軍のナンバー2、海軍の作戦部長、国防副長官らと会談し ました。その会談資料によると、河野統幕長はオディエルノ陸軍参謀総長に「安保法制は予定通りか」と聞かれ、「来年夏までに終了するものと考えている」と 答えています。

――国会でも大問題になりましたが、この河野統幕長はいわく付きなんですよね?

 2008年にミサイル護衛艦「あたご」が漁船に衝突、乗組員親子が犠牲になった事故の際、記者会見したのが当時の河野海将補です。薄ら笑いを浮かべ、緊 張感のない態度でメディアに批判されました。漁船が護衛艦を避けるのが当然という意識がありありでした。海自の場合、50年代から米海軍と一体で行動して きているので、エリート幹部たちは身も心も米国モードで育っている。自分たちこそが「国際貢献」「日米同盟」を担っているという驕りがある。

――だから、国会審議を軽視するような発言が飛び出すわけですね。

 しかも、この時の会談で河野氏は他にもとんでもないことを言っているんです。自衛隊はエボラ熱対策のために米アフリカ軍(AFRICOM=司令部はドイ ツ・シュツットガルト)に連絡官を派遣していますが、河野氏は「エボラ熱対処後も連絡官派遣を継続し、情報収集や我々のできることを検討したい。また、自 衛隊は海賊対処を実施しているが、ジブチは海賊対処のみならず他の活動における拠点にしたいと考えている。防衛駐在官の増派も検討しており、 AFRICOMとの連携を強化したい」(ワーク国防副長官との会談)と。「今後はPACOM(太平洋軍=アジア・太平洋地域担当)、CENTCOM(米中 央軍=中東担当)、AFRICOMとの連携を強化して参りたい」(デンプシー統合参謀本部議長との会談)とも言っています。

 ジブチを拠点にしてウイングを広げる。テロとの戦いにも自衛隊を送り込む。米軍が世界で展開する6つの統合軍のうち、3つで協力する。そういうことを宣言したも同然です。

 米軍が重視しているのは自衛隊が集団的自衛権を行使できる存立危機事態ではなく、米軍を後方支援する重要影響事態法と平和支援法の方です。弾薬を運ぶこ とや給油なんて、自衛隊がやらなくても米軍は自己完結している。自衛隊に一番やってほしいのは捜索救助活動でしょう。遠からず、米軍のために自衛隊の犠牲 者が出ると思います。政府内部でも国会でも議論していないのに、米軍トップと勝手に話を進める制服組の暴走に、背広組も内心、穏やかではないでしょう。

――戦前をほうふつさせるようなイヤな動きですね。

 それでなくても、安倍政権は今年3月、「文官統制」を葬り去っている。防衛省設置法を改正して、背広組も制服組も対等に大臣を補佐できるようになり、文 官優位が崩された。戦前は陸海軍大臣が反対すれば、内閣は総辞職です。その反省もあり、文官スタッフ優位制という特殊な日本的仕組みができた。この3月に それが実質的になくなった。

――ますますこの政権には、監視と選挙での鉄槌が必要ですね。

 選挙で負けさせ、政権交代を実現させて、昨年7月1日の閣議決定を撤回させることが必要です。あの閣議決定で、安倍政権は憲法解釈を変えてしまった。新 3要件を満たせば、限定的な集団的自衛権は許される。今後はこの解釈が法律の運用の基本になっていく。それだけで社会がどんどん変わっていく。

■「安保関連法廃止法案」を議員立法で

――忘却戦術に乗ってはいけませんね。

 そのためには安保関連法廃止法案を議員立法で出すことです。すでに盗聴法や政党助成法などに廃止法案が議員立法で出されています。参考になるのは07年 の「イラク特措法廃止法案」で、衆院で3度、参院で1度出され、参院では可決されています。大マスコミが報じないので騒がれなかったが、安保法制の違憲性 を明示し、訴え続けるには有効です。

――それにしても、この政権は露骨ですね。

 普通の自民党政権なら要職に就けないタイプの異様な人材が跋扈している。そういう人々が安倍首相の使えるうちに、今まで世論や憲法によって抑制されてき たことを全部やっちまえ、と焦っているのです。消費税増税、派遣労働の拡大、原発の再稼働等々、十分な議論が必要な課題をサクサクと決めていってしまう。 民主国家とは思えない乱暴さが目立ちます。

――特定秘密保護法から武器輸出三原則の見直し、経団連の武器商人化、憲法破壊まで、あれよあれよですものね。

 登場人物も筋悪ですよ。法的安定性を否定した礒崎陽輔首相補佐官は、法制局参事官になりたいけどなれなかった過去がある。政治家になってから「俺が自民党の法制局長官だ」と威張っている。コンプレックスが議員になってからいびつな形で表れています。

――安倍首相も同じようにいわれますね。

 この政権で重用されている官僚、政治家には同じようなタイプが多い。コースから外れた人が、首相のお友達ということで、序列を超えて重要なポストに就い ている。世襲3代目の北朝鮮の恣意的人事とそっくりですよ。能力に疑問符がつくので、その分、恐怖支配になる。警察、国税、検察を押さえて、マスコミを脅 し、ビビらせている。能力的に最弱の政権が最強の権力を振りかざしているように見えますね。

参考URL:http://www.nikkan-gendai.com/articles/view/news/164857
[東京 25日 ロイター] - アベノミクスの金看板だった金融政策が、24日公表の「第2ステージ」で示された新3本の矢から消えた。

消費の活性化や低所得者対策の進展を目指す政府・与党内からは、日銀が掲げる物価2%実現を急ぐべきではないとの声も漏れ、金融政策は優先順位のトップから「降板」したもようだ。

今後は、何がアベノミクスのエンジンになるのか、不透明感が漂っている。安倍首相は24日に自民党本部で会見し「本日からアベノミクスは第2ステージに入る」と宣言し、新たな「3本の矢」の政策で全ての人が活躍できる「1億総活躍社会」を目指すと表明した。

経済最優先の姿勢を鮮明にし、具体的には名目国内総生産(GDP)を600兆円に増やすことを掲げた。新たな3本の矢は、希望を生み出す強い経済、夢を紡ぐ子育て支援、安心につながる社会保障━━。

これまでの大胆な金融政策、機動的な財政政策、民間投資を喚起する成長戦略から大きく転換し、軸足を構造改革に移す姿勢を鮮明にした。中でも市場の一部で思惑が広がっているのが、「第2ステージ」における金融政策の役割。

新3本の矢から金融政策が抜け落ち、市場では「安倍政権の経済政策における優先順位が変化したことは間違いない」(国内金融機関)との見方が広がっており、今後の金融政策運営への影響に関心が高まっている。

麻生太郎財務相は25日の会見で「新たな3本の矢の1本目(強い経済)に、今までの3つが集約されている」と説明。旧3本の矢は引き継がれていると強調した。甘利明経済再生相も、物価2%の目標は変わっていないとし、旧3本の矢は安倍内閣の至上命題であるデフレ脱却を目的としたものであり、新政策発表以降も位置づけは変わらないと語った。

主要閣僚が25日の会見で、そろってデフレ脱却に向けた金融政策の重要性を強調したが、現在の日銀による量的・質的金融緩和(QQE)をさらに強化することについては、政府・与党内から慎重な見方も聞こえてくる。安倍首相は24日の会見の冒頭、日本経済について「もはやデフレではない、という状態まで来た。デフレ脱却は、もう目の前だ」と語った。

政府関係者の1人は、この発言の真意について「旧3本の矢によって、デフレ脱却は事実上ほぼ実現したという認識だ」と述べ、金融政策などは一定の役割をすでに果たしたとの見解を示した。

目標に掲げるGDP600兆円の実現のカギを握るのは、約6割を占める個人消費。11日の経済財政諮問会議(議長・安倍首相)で民間議員は、GDPに占める個人消費の割合を現状の6割程度から、米国並みの7割程度に引き上げることを提言した。

政府・与党内では、消費税率引き上げに伴う反動減の影響一巡後も、個人消費が低迷を続けている背景として、食料品や日用品などの物価上昇を指摘する声も多い。内閣府は諮問会議に提出した資料の中で「身近な食料品等の物価上昇が相次ぐ中、低所得者層等の消費活動に影響を与える可能性」を明記した。

個人消費の活性化に向け、政府・与党は低所得者対策などに力を入れていく方針。ある政府筋は、さらなる円安・物価高を招きやすい追加金融緩和は「われわれの政策の方向性と整合的ではない。

日銀は物価2%達成を急ぐべきではない」と言い切る。また、政府部内には、日銀が追加緩和に踏み切って円安が進めば、原油安で利益を享受できる消費者にはマイナスとなり、現在の経済情勢における追加緩和は不要との見解を示す声も少なくない。

他方、これまでのアベノミクスの成果を積極的に評価し、今後も金融政策を政策の中心に据えることを志向している与党議員の一部やシンクタンク関係者の中には、金融政策の優先度を下げることで、デフレへの逆戻りを懸念する声も出ている。

また、市場の一部では「金融緩和に代わるエンジンが見当たらない。本当に成長できるのか」(国内金融機関の関係者)との声も出ている。中国経済の減速懸念などを背景に世界経済の不透明感が強まる中、原油安を背景に足元で日銀が目安とする生鮮食品を除いた消費者物価(コアCPI)の前年比上昇率は、マイナスに落ち込んだ。

10月末に日銀が公表する「経済・物価情勢の展望(展望リポート)」を控えて、市場では追加緩和観測も高まりつつある。安倍首相がアベノミクス第2ステージ入りを宣言した翌日の25日昼、黒田総裁が官邸に呼ばれ、予定の1時間程度を超過して安倍・黒田会談が行われた。

その内容は明らかにされていないが、市場では金融緩和観測が高まって、日経平均.N225は前日比308円68銭高の1万7880円51銭に上昇して引けた。

アベノミクスにおける金融政策の位置づけの変化が、今後の金融政策運営にどのような影響を与えるのか、市場は注視している。

参考URL:http://jp.reuters.com/article/2015/09/25/focus-abenomics-second-stage-idJPKCN0RP0V320150925