9年半ぶりの米国の利上げの影響が、世界の金融・証券市場に広がっている。新興国や産油国では通貨下落の圧力を弱めるため、メキシコや中東などが相次いで追随利上げを決めた。市場にあふれたマネーが逆回転するとの見方から、原油価格が下げ止まらない。原油安が投資家心理を冷まし、17日の米国株相場は大幅に反落。18日の東京株式市場も日経平均株価が反落した。

 メキシコ銀行(中央銀行)は17日、政策金利である翌日物金利の誘導目標を0.25%引き上げて年3.25%にすると発表した。利上げは2008年8月以来となる。これまでの政策金利3%は過去最低の水準だった。

 メキシコの通貨ペソは1ドル=17ペソ前後で推移しており、年初から15%ほどペソ安・ドル高の水準にある。足元で物価上昇率は落ちついているものの、米利上げを受けてペソ安・ドル高が進めば輸入物価の上昇に伴いインフレが加速しかねない。

 チリの中央銀行も17日に政策金利を0.25%引き上げて3.50%にすると発表した。利上げは10月の会合以来だ。

 中東では16~17日にかけてサウジアラビア、クウェート、バーレーン、アラブ首長国連邦(UAE)が利上げに動いた。原油価格下落に伴う歳入減で経常収支は悪化しており、利上げによって資金流出の加速を抑えたい意向とみられる。

 ベトナム国家銀行(中央銀行)は18日、米ドルの預金金利を同日からゼロにするよう金融機関に通達を出した。米利上げに伴いドン安が進んでいる。ドンの普通預金金利が7%以上なのに対し、ドル金利は0.25%程度と低いにもかかわらず、ドルに替える消費者が急増していた。ドル預金金利がゼロになるのは初めてだ。

 米利上げ前に予防的に引き締めに踏み切った国もある。南アフリカは11月、政策金利を0.25%引き上げ6.25%とした。南米ペルーも今月10日に0.25%引き上げて3.75%にしている。市場は今後、ブラジルやコロンビア、タイなども利上げに踏み切るとみている。

 だが米国の利上げに追随した国の経済が、米国ほど堅調とはいえない。チリの場合、中国の需要減を背景に主要輸出品である銅価格の大幅下落や鉱業分野での投資減に直面。15年の実質成長率は2%程度と、直近のピークだった11年(5.8%)のほぼ3分の1にとどまる見込み。こうした状況で利上げに踏み切ると、景気を一段と冷やしかねない。

 メキシコの場合も「足元経済は想定よりも堅調だが、需要に引っ張られる物価上昇は想定しにくい」(米ゴールドマン・サックス)のが現状で、利上げが功を奏するかは楽観できない。

 追随利上げした新興国の景気が鈍化し、世界景気の不透明感が一段と強まるようだと、米国景気にとってもマイナス。FRBは来年4回程度の利上げを模索しているもようだが、金融政策のかじ取りは細心の注意が求められる。

参考URL:http://www.nikkei.com/article/DGXLASGM18H2G_Y5A211C1MM0000
30年債 (指標銘柄)
    米東部時間16時21分   100*28.00=2.9557%
     前営業日終盤     102*15.00=2.8763%

10年債 (指標銘柄)    
    米東部時間16時21分   100*07.00=2.2252%
     前営業日終盤     101*01.50=2.1323%

5年債 (指標銘柄)    
    米東部時間16時21分   99*27.75=1.6529%
     前営業日終盤     100*10.00=1.5593%

2年債 (指標銘柄)    
    米東部時間16時19分   99*27.50=0.9476%
     前営業日終盤      99*31.75=0.8790%

米金融・債券市場は、15─16日の米連邦公開市場委員会(FOMC)をにらみ不
安定な値動きとなる中、国債価格が下落。利回りは前週末につけていた数週間ぶりの低水
準から上昇した。
ただ、米投資会社サード・アベニュー・マネジメント傘下の高利回り(ジャンク)社
債ファンドが前週実質的な破綻状態に陥り、投資家からの解約受付を停止。投資家の間で
懸念が続いていることを背景に、相場は下げ渋る展開となった。
レイモンド・ジェイムズの市場巣トラテジスト、エリス・ファイファー氏は「前週末
に浮上したクレジット懸念が継続している」と述べた。
原油価格は11年ぶりの安値に迫った後、幾分安定化し、債券相場を下支えた。
取引終盤、指標10年債 は25/32安、利回りは2.227%。同利
回りは前営業日、5週間ぶりの低水準をつけたほか、1日の下げとしては7月初め以来の
大きさとなった。
30年債 は1─19/32安、利回りは2.958%。利回りは前営業
日、6週間ぶりの水準に低下していた。
市場参加者の間では、米連邦準備理事会(FRB)が今週のFOMCで利上げに踏み
切るとの見方が大勢となっている。
ソシエテ・ジェネラルは11日発表したリサーチノートで、12月利上げ予想が市場
に完全に織り込まれていることを反映し、短期債はFOMC前に安定的に推移するとの見
方を示した。

Tボンド先物3月限 は1━25/32安の155━14/32。
Tノート先物3月限 は23.5/32安の126━13.50/32。

<ドルスワップスプレッド>
   LAST Change
U.S. 2-year dollar swap spread 6.00 (-5.00)
U.S. 3-year dollar swap spread -0.25 (-5.50)
U.S. 5-year dollar swap spread -4.75 (-4.25)
U.S. 10-year dollar swap spread -9.75 (-4.25)
U.S. 30-year dollar swap spread -37.25 (-4.25)
デンマークの投資銀行サクソバンクのスティーン・ヤコブセン最高運用責任者(CIO)は17日、ロイターとのインタビューで、安倍晋三首相の経済政策であるアベノミクスについて「すでに失敗している」と述べ、日本には円高が必要だとの見解を示した。また、日本企業は為替を言い訳に改革を怠っていると指摘し、利益の増加や生産性の向上などに努めるべきだと主張した。

コペンハーゲンに本拠を置くデリバティブ取引の世界的大手で、毎年末に発表する向こう1年の金融市場に関する「大胆予測」でも知られる同行だが、ヤコブセン氏はチーフ・エコノミストとしてその予測の責任者も務めている。

インタビューは同氏が来日した17日に東京で行った。概要は以下の通り。

――日本経済の現状をどうみるか。

「アベノミクスは失敗に終わったと思う。(「アベノミクス2.0」として打ち出された)新三本の矢は、もはや矢ではない。構造改革はどこに行ったのか」

「中央銀行が低金利政策をこれ以上継続しても効果がないことは政策担当者や学識者も認めるところだ。むしろ財政政策に対する負の影響が上回っているのが現状。

だからこそ日銀も追加金融緩和に踏み切っていない」

「日本の公的債務の対国内総生産(GDP)比はすでに高く、日銀も政府も、本来すべき減税ができず板挟み状態になっている。

「日銀のバランスシートは今も拡大しているが、拡大のペース自体は鈍化した。その傾向は今後さらに強まるとみている」

――為替について。

「ドル円相場の上昇に伴い資産価格は上昇してきたが、それも最終局面に差しかかっている。一時的に130円まで上昇する可能性はあるものの、1年後にはドルが下落し、2年後にはさらに一段のドル安が進むとみている」

「ドル下落は、私が2016年に起きると考える変化だ。ドル安になれば、コモディティ価格は安定し、新興国市場の投資意欲は高まり、ひいては日米欧の輸出セクターへの追い風となり、世界経済の成長に寄与するだろう」

「もし私の予想が外れて来年ドル高が進むなら、世界経済は減速してデフレに直面し、新興国市場はさらなる危機に瀕するだろう」

――日本に求められることは。

「私は、日本に必要なのは円高だと確信している。

日本は今年を振り返り、低金利、エネルギー安、円安の1年の末にリセッション(景気後退)に陥ったという現実を見つめるべきだ(16日発表の7─9月期GDPが2四半期連続でマイナスとなり、欧米の定義ではリセッション入りとされる)。

円安は資産価格を人為的に上昇させはするが、それは長期的かつ継続的な企業の収益力強化や生産性向上に基づくものではなく、日本経済の問題の解決策とはならない」

「通貨安政策を取ることは、いわば他国に負担を負わせて時間稼ぎをしているにすぎない。日本は本当にすべきことを見失った結果、国内企業の設備投資は落ち込み、日本の競争力を大いに弱めた。

円安の恩恵を受けるのは主に輸出企業だが、同セクターがGDPに占める割合は減少傾向にある。一方で、輸入価格の上昇により多くの日本人の可処分所得は減っている」

「日本にはモーニングコールが必要だ。長い眠りから呼び覚まされなくてはならない。それができるのは円高だと思う。

日本企業はかつては円高、今は円安を盾に使って十分な改革を進めず、政府や取引先企業との近過ぎる関係を解消しないでいる。

しかし為替は言い訳にすぎない。問題は円ではなく、イノベーションやガバナンス、収益構造の改革、経済が政府の強過ぎる影響力から脱することができるかなのだ」