いよいよ安倍首相が憲法改正の野望を隠さなくなってきた。10日のNHK「日曜討論」に出演した安倍は、夏の参院選について「自公だけでなく、改憲を考えている未来に向かって責任感の強い人たちと3分の2を構成していきたい」と宣言。衆院はすでに自公で改憲の発議に必要な3分の2議席を確保している。参院でも、おおさか維新の会や、日本のこころを大切にする党などと合わせて、3分の2を取りにいくというのだ。ただ、どの条文を改正するつもりなのかという肝心の点については、「これから議論が深まっていく」とゴマカした。
「討論とは名ばかりで、ほとんど安倍首相の広報番組でしたね。改憲宣言に対しても、『現行憲法の何が問題だと考えているのか』『どこをどう変えるのか』という突っ込みはまるでない。約30分間にわたって、安倍首相の一方的な言い分を垂れ流していました。しかも、安倍首相の出演部分は事前収録だから、用意した台本を読むだけのヤラセの類いです。インタビュアーが首相の飲み食い仲間でズブズブの関係なのが画面からも伝わってくる。公共放送で、こんなお手盛り番組を流すことが許されるのでしょうか。国民の知る権利にまったく応える気がない。番組を見た視聴者は、怒りを通り越して呆れ返ったと思いますよ」(政治評論家・本澤二郎氏)
聞き手の島田敏男解説委員は、安倍と頻繁に高級寿司屋で会食する「寿司仲間」として知られている。首相と食う寿司はさぞやおいしいことだろう。NHKに限った話ではないが、首相と食事に行かないキャスターは攻撃され、降ろされ、画面から消えていく。それを尻目に、寿司仲間はたいこ持ちを続けるのだ。
■なりふり構わず改憲に着手
「マスメディアの幹部連中が、普段から首相とゴルフや会食をしてなれ合っていれば、追及が甘くなるのも当然です。安倍政権は、なりふり構わず参院選で3分の2を取りにくる。そのために、メディア関係者の功名心やライバル心まで利用して手なずけてきたのだし、批判的なメディアは本気で潰しにかかる。参院選は3年ごとにしかありませんから、今夏のチャンスを逃したら、この先3年間は改憲の発議ができない。そのうち安倍首相の任期も切れてしまいます。逆に言えば、3分の2を取れば、安倍首相の政治生命はしばらく安泰です。任期中に必ず改憲に着手し、祖父の岸信介が達成できなかった憲法改正の悲願を自分の手で成し遂げて歴史に名を残すという野望を満たす。改憲をタテに党内政局を抑え込み、総裁任期をズルズルと先延ばしすることも可能になります」(立正大名誉教授・金子勝氏=憲法)
安倍にしてみれば、改憲を争点にすれば、衆参ダブル選の大義になるという思惑もある。実は与党内にも、改憲を選挙の争点にするべきでないという意見がある。安保法制に対する国民の反対が凄まじいものだったからだ。同日選への慎重論もある。だから、安倍はあえて「日曜討論」で改憲に触れた。与野党を牽制し、解散カードの威力で政局の主導権を握るためだ。
野党を揺さぶる効果もある。維新の党はもともと改憲に前向きだったし、民主党内にも松下政経塾一派など改憲派がいる。憲法改正を踏み絵にして、野党協力に楔を打ち込む狙いだ。安倍の発言を無批判に垂れ流すことは、そういう薄汚い政治的思惑にメディアが加担しているも同然なのである。
理論で勝てないからレッテル貼りで優位を保つ軽佻浮薄
安倍は、安保法制に関しても、「私は1000回以上、中谷大臣は2000回以上、説明してきました」なんて言っていた。国民からすれば、一度だってマトモな説明を聞いたことはない。そもそも回数の問題でもない。
「1000回は大げさとして、この安保法制は明らかに違憲なのだから、いくら合憲と言いくるめようとしたところで、納得できるはずがない。それは安倍首相も分かっているから、『自分たちを拘束する憲法なんて知ったことじゃない』とばかりに、むちゃくちゃな憲法解釈をして、強行採決したんじゃないですか。海外で武力行使できるようにすることが何より大事だから、憲法破壊行為に及んだ。そんな蛮行を働いておきながら、何度説明しても理解できない国民が悪いような言い方をするのは悪辣すぎる。1000回説明したなんて、詭弁もいいところです」(金子勝氏=前出)
こういう「言ったもん勝ち」で議論を封じようとする安倍の不誠実な態度は国会答弁でも目立つ。
何かにつけて「民主党時代はひどかった」とレッテル貼りをし、ナントカのひとつ覚えで「対案」を連呼する。そう言っておけば、喝采する御用メディアやネット住民がいるからだ。理屈で論破できないから、相手を貶めることで自らの優位を保とうとする。そのメンタリティーは、卑劣なヘイトスピーチと変わらない。
安倍の見識なんて、しょせんその程度のいい加減なもの。すぐに底が割れる。
8日午前の衆院予算委で、自民党議員からの質問に対し、補正のバラマキ批判について「しっかりと準備をして、補正予算を編成し、実のある議論をしたいと思っております。まぁできることなら野党からも対案を、たまには出していただいて、しっかりと議論をさせていただきたい」なんてエラソーに言っていたのだが、耳を疑うとはこのことだ。
■三権分立も理解していない
予算の発案権を持つのは内閣だけなのである。このことは憲法に明記されている。それ以前に、国会における常識だ。いったい何年、国会議員をやってきたのか。
さすがに看過できなかったとみえて、午後の質疑に立った民主党の階議員が「憲法上、野党議員は予算を国会に提出できるのか?」と質問。すると、安倍は「提出するには特定の条件を満たしていなければならない」と答えた。議場は騒然だ。後ろに控えていた秘書官が慌てて安倍に駆け寄り、耳打ちすると、安倍の表情は一変。「予算関連法案について聞かれたと思った」とか取り繕っていたが、国会議員は法案の対案は出せても予算の対案は提出できないという基本のキすら知らなかったとしか思えない。
この様子だと、おそらく三権分立も理解していない。内閣と国会の役割分担が分からない。だから、国会を私物化し、独裁者然として振る舞っていられる。党の税調や政調を支配下に置いたり、法案審議をお願いする立場で国会議員にヤジを飛ばすなんて、三権分立を知っていれば、できっこない言動なのだ。前出の本澤二郎氏も言う。
「立憲主義も知らなかった首相です。憲法順守義務を守る気もない。憲法を読んだこともないような人が、憲法改正をわめいているのは滑稽だし、日本国民として恥ずかしい。憲法を知らない総理大臣には、改憲の発議をする資格などありません。憲法が何たるかもロクに知らないで、憲法改正など口にするのもおこがましいのです。こんな首相に憲法を変えさせたら、それこそ北朝鮮のような独裁国家になってしまう。極めて危険です」
安倍は改憲派を「未来への責任感の強い人」と称して善良な国民をダマシにかかっているが、仮にも「責任」を口にするのなら、子や孫に平和な社会を残す。それこそが未来への責任のはずだ。野党の責任は、立憲主義を破壊する独裁首相と与党の暴走を阻止する受け皿を作ること。いま日本は歴史の分岐点にある。憲法を知らない首相に平和憲法を破壊されていいのか。国民も真剣に考える必要がある。他人事ではないのだ。
参考URL:http://www.nikkan-gendai.com/articles/view/news/173207
「討論とは名ばかりで、ほとんど安倍首相の広報番組でしたね。改憲宣言に対しても、『現行憲法の何が問題だと考えているのか』『どこをどう変えるのか』という突っ込みはまるでない。約30分間にわたって、安倍首相の一方的な言い分を垂れ流していました。しかも、安倍首相の出演部分は事前収録だから、用意した台本を読むだけのヤラセの類いです。インタビュアーが首相の飲み食い仲間でズブズブの関係なのが画面からも伝わってくる。公共放送で、こんなお手盛り番組を流すことが許されるのでしょうか。国民の知る権利にまったく応える気がない。番組を見た視聴者は、怒りを通り越して呆れ返ったと思いますよ」(政治評論家・本澤二郎氏)
聞き手の島田敏男解説委員は、安倍と頻繁に高級寿司屋で会食する「寿司仲間」として知られている。首相と食う寿司はさぞやおいしいことだろう。NHKに限った話ではないが、首相と食事に行かないキャスターは攻撃され、降ろされ、画面から消えていく。それを尻目に、寿司仲間はたいこ持ちを続けるのだ。
■なりふり構わず改憲に着手
「マスメディアの幹部連中が、普段から首相とゴルフや会食をしてなれ合っていれば、追及が甘くなるのも当然です。安倍政権は、なりふり構わず参院選で3分の2を取りにくる。そのために、メディア関係者の功名心やライバル心まで利用して手なずけてきたのだし、批判的なメディアは本気で潰しにかかる。参院選は3年ごとにしかありませんから、今夏のチャンスを逃したら、この先3年間は改憲の発議ができない。そのうち安倍首相の任期も切れてしまいます。逆に言えば、3分の2を取れば、安倍首相の政治生命はしばらく安泰です。任期中に必ず改憲に着手し、祖父の岸信介が達成できなかった憲法改正の悲願を自分の手で成し遂げて歴史に名を残すという野望を満たす。改憲をタテに党内政局を抑え込み、総裁任期をズルズルと先延ばしすることも可能になります」(立正大名誉教授・金子勝氏=憲法)
安倍にしてみれば、改憲を争点にすれば、衆参ダブル選の大義になるという思惑もある。実は与党内にも、改憲を選挙の争点にするべきでないという意見がある。安保法制に対する国民の反対が凄まじいものだったからだ。同日選への慎重論もある。だから、安倍はあえて「日曜討論」で改憲に触れた。与野党を牽制し、解散カードの威力で政局の主導権を握るためだ。
野党を揺さぶる効果もある。維新の党はもともと改憲に前向きだったし、民主党内にも松下政経塾一派など改憲派がいる。憲法改正を踏み絵にして、野党協力に楔を打ち込む狙いだ。安倍の発言を無批判に垂れ流すことは、そういう薄汚い政治的思惑にメディアが加担しているも同然なのである。
理論で勝てないからレッテル貼りで優位を保つ軽佻浮薄
安倍は、安保法制に関しても、「私は1000回以上、中谷大臣は2000回以上、説明してきました」なんて言っていた。国民からすれば、一度だってマトモな説明を聞いたことはない。そもそも回数の問題でもない。
「1000回は大げさとして、この安保法制は明らかに違憲なのだから、いくら合憲と言いくるめようとしたところで、納得できるはずがない。それは安倍首相も分かっているから、『自分たちを拘束する憲法なんて知ったことじゃない』とばかりに、むちゃくちゃな憲法解釈をして、強行採決したんじゃないですか。海外で武力行使できるようにすることが何より大事だから、憲法破壊行為に及んだ。そんな蛮行を働いておきながら、何度説明しても理解できない国民が悪いような言い方をするのは悪辣すぎる。1000回説明したなんて、詭弁もいいところです」(金子勝氏=前出)
こういう「言ったもん勝ち」で議論を封じようとする安倍の不誠実な態度は国会答弁でも目立つ。
何かにつけて「民主党時代はひどかった」とレッテル貼りをし、ナントカのひとつ覚えで「対案」を連呼する。そう言っておけば、喝采する御用メディアやネット住民がいるからだ。理屈で論破できないから、相手を貶めることで自らの優位を保とうとする。そのメンタリティーは、卑劣なヘイトスピーチと変わらない。
安倍の見識なんて、しょせんその程度のいい加減なもの。すぐに底が割れる。
8日午前の衆院予算委で、自民党議員からの質問に対し、補正のバラマキ批判について「しっかりと準備をして、補正予算を編成し、実のある議論をしたいと思っております。まぁできることなら野党からも対案を、たまには出していただいて、しっかりと議論をさせていただきたい」なんてエラソーに言っていたのだが、耳を疑うとはこのことだ。
■三権分立も理解していない
予算の発案権を持つのは内閣だけなのである。このことは憲法に明記されている。それ以前に、国会における常識だ。いったい何年、国会議員をやってきたのか。
さすがに看過できなかったとみえて、午後の質疑に立った民主党の階議員が「憲法上、野党議員は予算を国会に提出できるのか?」と質問。すると、安倍は「提出するには特定の条件を満たしていなければならない」と答えた。議場は騒然だ。後ろに控えていた秘書官が慌てて安倍に駆け寄り、耳打ちすると、安倍の表情は一変。「予算関連法案について聞かれたと思った」とか取り繕っていたが、国会議員は法案の対案は出せても予算の対案は提出できないという基本のキすら知らなかったとしか思えない。
この様子だと、おそらく三権分立も理解していない。内閣と国会の役割分担が分からない。だから、国会を私物化し、独裁者然として振る舞っていられる。党の税調や政調を支配下に置いたり、法案審議をお願いする立場で国会議員にヤジを飛ばすなんて、三権分立を知っていれば、できっこない言動なのだ。前出の本澤二郎氏も言う。
「立憲主義も知らなかった首相です。憲法順守義務を守る気もない。憲法を読んだこともないような人が、憲法改正をわめいているのは滑稽だし、日本国民として恥ずかしい。憲法を知らない総理大臣には、改憲の発議をする資格などありません。憲法が何たるかもロクに知らないで、憲法改正など口にするのもおこがましいのです。こんな首相に憲法を変えさせたら、それこそ北朝鮮のような独裁国家になってしまう。極めて危険です」
安倍は改憲派を「未来への責任感の強い人」と称して善良な国民をダマシにかかっているが、仮にも「責任」を口にするのなら、子や孫に平和な社会を残す。それこそが未来への責任のはずだ。野党の責任は、立憲主義を破壊する独裁首相と与党の暴走を阻止する受け皿を作ること。いま日本は歴史の分岐点にある。憲法を知らない首相に平和憲法を破壊されていいのか。国民も真剣に考える必要がある。他人事ではないのだ。
参考URL:http://www.nikkan-gendai.com/articles/view/news/173207