昨日のつづき・・・


あれから2年後の夏。

私は由緒正しいホテルのプールのオープニングパーティーに招待された。


招待をしてくださった方から「撮影が入るので、ぜひ水着で来て下さい!」というお願いをされていたので、友人と私服の下にしっかり水着を着て行ったのだが、他の招待客は30代〜50代のスーツを着たオジサンばかりで、水着を着ている人などいなかった。


なので、私たちも私服のまま、1時間程度プールサイドでパーティーを楽しんでいたのだが、なんと帰り際にヤツの姿を見つけてしまった。


そう、コンビニツバ即飲み男。



私は鉢合わせるワケには行きません。

しかし、男は出口へと向かう通り道に立っています。陸を通れば完全にバレてしまう。どうすれば気付かれずに帰れるだろうか。


真剣に真剣に考えた結果、私はホテルスタッフの方に「プールに入ってもいいですか?」と確認をした。


すると「ぜひ!お仕事終わりにスーツのままいらしている方が多いので、誰も入ってくださらないんです!ぜひ入ってください!」とゴリ押しされた。


よし、これはもう行くしかない。

ツバ即飲み男にバレずに帰る方法は泳ぐしかない。


私は慌てて服を脱ぎ、友人に事情を説明して、持ち物全てを預けると、ものすごいスピードでプールに入った。


しかし、スーツのオッサンがたくさんいる中で、急にビキニの女がプールに入ったということだけでも、かなりな視聴率を収めてしまっているのに、向こう岸までクロールをしたら余計に目立ってしまうだろう。



ましてや、クロールは顔を上げて息継ぎをするので、もしかしたらその時にツバ即飲み男と目が合ってバレてしまうかもしれない。


どうしようか必死に悩んだ結果、「潜水」の2文字が頭に浮かんだ。


もうこれしかない。


他の招待客からは奇妙な女だと思われることだろう。来年の招待客リストから私は外されることだろう。


しかし、そんなことを気にしている場合ではない。それにプールのオープニングパーティーにスーツで来る方がどちらかと言えば間違っている。一気にプールの底まで潜り、出口を目指して潜水した。


思ったよりも距離が長くて、途中で死ぬかと思ったが、なんとか出口に辿り着けた。


荷物を預かっていてくれた友人は、ちょっとだけ他人のフリをしてきたが、とりあえずツバ即飲み男にはバレることなく、私は家路に着けた。



子供の頃、スイミングスクールに通っておいて本当に良かった。潜水の練習は無駄ではなかった。きっと、この日のために私は潜水の練習をしてきたのだと思う。


しかし、これだけは未だに疑問に思っている。

バタフライはいつ使うのだろうか・・・