知りたくなかったことを意図せず知ってしまうことってありますよね。
未練のある元恋人に新恋人ができたこととか、そいつが自分よりイケてることとか、
親切な人が実はお金にだらしなかったとか、オラフの声優がコカインやってたとか。
何年か前にセフレだったAくんという男がいるんですけど、こないだそいつと共通の男友達から「アイツのヤバイ性癖知ってる?」と突然、聞かれたんです。
もちろん、セフレだったのである程度の性癖は知っているつもりなんですけど、ヤバイ性癖があった覚えはなくて、私はAくんを"いたってスタンダードなスケベ"だと思っていました。
まあ、Aくんとのセックスで感じた違和感を強いて挙げるとすれば、初めてセックスをする際に「ノーミュージック派?」というキモい質問をされて「いや、タワレコ店員かよ」という100点満点中2点のツッコミを見事にスルーされたことぐらい。
しかし、"尻は軽く口は重く"をモットーに生きている私は、Aくんとセフレだったこと自体、誰にも話していないので「そんなに性癖ヤバくないと思うよ!」とは言い返せず「そうなの?」とだけ聞き返すことに。
すると、
「性癖がヤバイっていうか、観てるAVのカテゴリーとかがヤバイんだよね(笑)」
「へー、そうなんだ」
「アイツさ、昔からブス好きなんだよ」
「へ〜」
「AVの検索も『ブス 巨乳』で検索かけてるんだって(笑)」
「へ〜」
「美人な巨乳は微妙らしくてさ、わざわざ、ブスな巨乳のAV見てるんだって(笑)」
「へ〜」
「ヤバくない?ブスな巨乳の方が興奮するって言っててさ(笑)」
「・・・」
突然、男友達は見えない拳で私に殴りかかり、ほんのわずかな時間でKO勝ちしたかと思いきや、最後には死体蹴りまでして笑っているのです。
「アイツさ、昔からブス好きなんだよ」の時点で私はリングの床をタップしていたのに。
もちろん、彼に悪気がないことは分かっています。しかし、こちらはもう再起不能なのです。立ち上がる気力などありません。
おっと、最後に走馬灯が見えてきました。
私はどうやら完全に死んでしまったようです。
Aくんとセックスをしている最中、私が顔を手で隠した際に、「顔見ると興奮するからそれやめて」と言われた光景が、鮮明に頭の中をグルグルと駆け巡っています。
あぁ、長生きしたかったなぁ・・・
出来れば知らずに死にたかったなぁ・・・