元彼とディズニーに行った時のこと。
シンデレラ城の前で撮影したツーショットをインスタのストーリーにアップしたら、知人から「私も今彼氏とディズニーにいる!」というメッセージが送られて来た。
「マジか!今、ファンタジーランドにいるよ!」
「え!私たちもいるよ〜!久々に妹尾ちゃん会いたい!」
「会おう!電話して!090-XXXX-XXXX」
すぐに電話がかかってきて、その子に会うことができたのだが、互いの彼氏がちょうどトイレに行っており、しばらく二人で話していた。
「妹尾ちゃんの彼氏に会えるの楽しみ!ツーショットインスタでいつも見てるよ!」
「えー!なんか恥ずかしいわ(笑)◯◯ちゃんの彼氏はどんな人なのー?」
「えーっとね、8歳年上でフットボールアワーの岩尾に似てるってよく言われてる(笑)」
「そうなの!?(笑)」
「私はよく分かんないけどね(笑)とにかく優しい人なんだ〜」
「いいね!本当に優しい人って意外といないからね〜」
そんな他愛もない会話の途中で私の彼が帰ってきた。
「あ、初めまして!ユウカの彼氏です(笑)」
「うわ〜!初めまして〜!やっぱりお似合いですね!」
「そんなそんな(笑)てか、ディズニーで『初めまして』ってあんまりないですよね!」
「たしかにないですね!あ、そういえばトイレ混んでました?」
「混んでました!すごい混んでて、個室がすぐに空いたからそっちに入ろうとしたんですけど、フットボールアワーのハゲみたいなおっさんが出てきて、めっちゃウンコ臭くてやめました(笑)」
人生で初めて空気が凍る瞬間を肌で感じた。
テメェはトイレからなんちゅー土産話を持って帰ってきてくれてんだ。どんだけ間の悪い男なんだ。
フェアリーゴッドマザーよ、頼むから私を消してください。それか時を巻き戻して、閉園までコイツをトイレの個室に閉じ込めてください。
そう強く願った。
しかし、私の願いは叶わなかった。
彼女の顔は完全に引きつっていた。
この時、本気で謝りたかった。
でも、私がここで謝るのは「お前の彼氏はフットボールアワーのハゲにそっくりで、ディズニーデートの最中にウンコしてたらしいぞ!」と言うのに等しい。
もしかしたら、私の彼氏がトイレで出会った岩尾似の男は、彼女が付き合っている岩尾とは別の岩尾だったかもしれないが、「別の岩尾じゃない?」と言うのはどちらにせよ岩尾似であることを肯定してしまうので失礼すぎる。岩尾とはなんとも扱いにくい男である。
私がそんなことを考えているうちに、彼女は携帯を見ながら「彼氏がここから全然遠い場所のトイレ行っちゃったみたいだから、そっち行くね!」と大ウソをついて去って行った。
お前の彼氏はすぐそこのトイレで確実にウンコをしたはずだ。ディズニーランドに岩尾似の男性が何匹もいるはずないからな。ミッキーさんと同じで、この場所に岩尾似の奴は一人しか存在しないんだよ!目を覚ませ!
とはいえ、なんの罪もない彼女を傷付けてしまったことを申し訳なく思う。あの後、どんな気持ちでデートをしていたのだろうか。
別にウンコをしていた岩尾似の彼氏も、なんなら私の彼氏も、誰も悪くはないんだけれど、本当にごめんなさい。
あの日1日、私はあなたのことが気がかりでした。ただ、それ以上に"彼氏がどんだけ岩尾に似ているのか"未だに気になってしまう自分がいるということを重ねてお詫び申し上げます。