こんにちは、妹尾ユウカです。
今回はタイトル通り、「パンツ盗撮されたよ」という話。妹尾のパンツを盗撮する悪趣味な奴がいたんです。
友人とランチをした帰り道。
イヤホンを装着して携帯片手に駅ビルのエスカレーターを登っていた時のこと。エスカレーターを登りきったところで、突然、知らないおばさんから肩を叩かれ、「あなた今スカートの中撮られてたわよ!」と声をかけられた。
あまりに突然のことで呆気にとられていると、おばさんは近くを通りかかった駅員さんを呼び止め、中肉中背の50代ぐらいのオジサンを指差しながら「あの男、この子のスカートの中を盗撮してた。間違いない。」と小声で話し出した。
その様子を見ていたオジサンはおもむろに携帯を取り出し、その場を立ち去ろうとしたので、駅員さんが後を追い、声をかけると、オジサンは毅然とした態度で駅員さんと会話をしていた。
そうこうしているうちに、もう一人の駅員さんがやってきて、オジサンは捕らえられた宇宙人のような形で両腕を掴まれてどこかへ消えていった。
私は次の予定があり、実害はなかったので、おばさんにお礼を伝えてその場を立ち去ろうとしたその時。
また別の駅員さんが小走りでこちらに向かってきて「お姉さん方!ちょっと交番の方までいいですか?」と声をかけてきた。
なぜかおばさんが「はい!」と即答したので、私も行くことになった。
交番に着くと、佐藤二朗似のお巡りさんから「一人ずつ話を聞かせて」と言われ、私とおばさんは順番に個室で当時の状況を話した。
話すといっても、私は盗撮されたことに気が付いていなかったので「エスカレーターにただ乗ってました。」「12時半頃だと思います。」「一人でした。」「撮られたかどうかは分かりません。」などと、聞かれたことに淡々と答えた。
しばらくして、佐藤二朗が「本人は否定しているけど、携帯調べてるから少し待っててください」と言ってきた。
どうやらこの交番のどこかにとらわれたオジサンも収容されているらしい。
それから10分が経った頃、佐藤二郎からパンツの色を聞かれた。
私「あっ、水色です・・・」
二郎「そうですねー。今画像の復元が出来たんだけど、下着の色、場所、時間も一致してるから、撮られたのはあなたで間違いないね。本人も認め出してるし」
私「認め出したんですか?」
二郎「うーん。撮ったフリをしただけで撮ってはないと言ってるんだけどね(笑)でも、画像出てきちゃったからね」
二郎も私も苦笑いである。
この時、交番についてから1時間ほどが経っていて、内心「あー、やっと帰れる」と思っていたら、若い警察官から「警察署の方に行くので、パトカーに乗ってください」と言われた。
満足げな顔のおばさんと二郎にお礼を告げて、渋々パトカーの後部座席に乗った。
交番からパトカーに乗る小娘を見る通行人の目はとても冷たい。
何もしていないのに、なんだかやましい気持ちにすらなった。
警察署に着くと、顔を覆い俯くおばあちゃんと、目を細めたおじいちゃんがか細い声で何度も警察官に謝っていた。警察署とはすごい場所だと思った。
そして、警察署に着いてからも交番と同じ質問を何度もされた。
警察署の薄暗く寒い階段で、どんな風にエスカレーターに乗っていたのかを再現させられた。
この長い取り調べが終わり、警察官から「あなたご自宅はこの近く?」と聞かれた。
この時、夕方をとっくに過ぎていた。
私「近くないです」
警察官「こんな時間だし、どなたかご家族の方迎えにこれるかな?また同じようなことにあったら困るからね」
私「母が自宅にいると思います」
そうして警察署から母に電話をかけてもらい、迎えに来てもらうことになった。
警察官「相手の男性のご両親も来ててね・・・まあ、男性もいい歳だから、ご両親と言っても70代ぐらいかな。あなたご両親はいくつ?」
私「そうなんですか。40代です。」
きっと、警察の方は少しでも私を和ませようとしてこの質問をしてくれたのだろう。
けれど、私はすごく嫌なことを思い出してしまった。
それは、警察署についてすぐ見かけたあの老夫婦のこと。顔を覆い俯くおばあちゃんと、目を細めて何度も謝るおじいちゃん。
まさに70代ぐらいで、盗撮したオジサンは50代ぐらいだった。おそらく、50代のオジサンのご両親は70代ぐらいだろう。
私の中で嫌なつじつまがぴったりと合ってしまった。
被害届を出しても出さなくても、苦しい思いをするに違いないのに、その上、被害届を出されたらこの老夫婦はどんなに大変な思いをするだろうか?
示談となったら、この老夫婦が示談金を支払うことになるのかもしれない。
一応、被害者なのに、そんな余計ともとれることを考え出していた。
警察官「被害届、どうしますか?」
「示談にするというの手もありますけど」
私はしばらく言葉が出ないまま考え込んでいた。
長い時間をかけて、1日取り調べを受けたこと。
オジサンのしたことはもちろん犯罪で、許されるべきことではないということ。
二郎も苦笑いの言い訳で罪を免れようとしていたこと。
でも、私はオバサンに言われなければ気が付かなかったし、そのせいか「被害にあった」「許せない」という思いは、実はほとんどないということ。
どうするべきか、とても悩んだ。
ここで何もしなかったら、またあのオジサンは同じことをするかもしれない。他の女性にも既に何度もやっているのかもしれない。
被害を訴えるには十分な事柄がこんなにもあるのに、私が今被害届や示談に踏みとどまっている理由はオジサンの両親への同情、自分への実害がそこまでない。それだけだ。
考え、悩み、考え、悩み、悩み、悩み。
私が出した結論は、被害届は出さない。示談もしない。だった。
そのことを警察官に伝えると、「後日、気変りしたら被害届を出すことも可能ですからね。」と言われた。
オジサンは「超ラッキー」と思ったかな?
「もう2度とやめよう」と思ったかな?
私にはその答えを知ることはできないから、後者であることをただ願いながら、迎えに来てくれた母と家路に着いた。
私のこの選択は正しかったのか?
間違っていたのか?
おそらく正解のないこの問題を、今もこうして時折思い出しては考えてしまう。
この話を読んで、あなたはどう思いましたか?
あなたが私の立場ならどうしましたか?
あなたの娘が私の立場だったらどう感じますか?