肺転移を告げられたあの時

ダーリンと私は、ナースステーション奥の小部屋に呼ばれました。

そこにやってきた若い医師とベテラン風医師。
若い医師は机に向かって椅子に座り、ベテラン風医師は、立ったまま足を組んで壁にもたれかかり腕組みをしていました。

ベテラン医師が私達に「何処まで聞いてるの?」と。
一瞬、何の事?と思いましたが、あぁダーリンの病状の事ね。と察し「S状結腸癌で肝臓に転移してる可能性が高いとお聞きしました」と答えると、ベテラン風医師が若い医師に向かって「言っていいよ」と下顎をクイっと突き出し合図しました。


若い医師が何だか申し訳なさそうに「肺にも転移していると思われます」と、まさかの衝撃発言。


絶句している私達に向かって、ベテラン医師は「セカンドオピニオンどうする?」と言ってきたのです。


初めて市民病院を受診したその日に、S状結腸癌・肝臓転移を宣告され、そこへ肺転移までしていると告げられた直後にその発言。


セカンドオピニオンの事なんて考える余裕も無く、「こちらでお世話になります」と答えましたが・・・


後から冷静になって考えると、その医師のあまりにもぶっきらぼうに言い放つ、その態度。

衝撃を受けている私達の気持ちなど、全く気にもかけず、まるで物のように扱う、その態度。


悔しくて悔しくて仕方ありませんでした。


立ったまま足を組んで、腕組みをして、ぶっきらぼうに言葉を放った、その時のベテラン医師の態度や口調が、今でも頭に焼き付いて忘れられないのです。

忘れてしまいたいのに。


その場でセカンドオピニオンの事なんて、考えられるはずがありません。


もう少し、患者の気持ちに寄り添った言葉をかけられないものでしょうか?


何だか、ダーリンがこれでもか!これでもか!と次から次へと叩きのめされているようで、悲しいやら悔しいやら・・・

何とも表現できない気持ちでいっぱいでした。

時間が経つにつれ、その気持ちは怒りへと変わって行きました。


同じ医療従事者として、ショックでもありました。


ダーリン。

あの時は本当に辛かったね。

よく凛としていられたね。

「男」だったね。

カッコよかったよ👍