愛する夫を殺されたゴリラが裁判を起こす。


正義とは。人間とは。人権とは。


こんなにぶっ飛んだ小説でこんなに真剣に考えさせられるとは思わなかった。




 ゴリラ裁判の日




著者:須藤 古都離さん

20233月発売




 本の概要


カメルーンで生まれたニシローランドゴリラ、名前はローズ。

メス、というよりも女性といった方がいいだろう。

ローズは人間に匹敵する知能を持ち、言葉を理解する。

手話を使って人間と「会話」もできる。



運命に導かれ、ローズはアメリカの動物園で暮らすようになった。

政治的なかけひきがいろいろあったようだが、ローズは意に介さない。

動物園で出会ったゴリラと愛を育み、夫婦の関係にもなる。順風満帆のはずだった――。



その夫が、檻に侵入した4歳の人間の子どもを助けるためにという理由で、銃で殺されてしまう。

なぜ? どうして麻酔銃を使わなかったの?

人間の命を救うために、ゴリラは殺してもいいの?

だめだ、どうしても許せない!


ローズは、夫のために、自分のために、正義のために、人間に対して、裁判で闘いを挑む!

アメリカで激しい議論をまきおこした「ハランベ事件」をモチーフとして生み出された感動巨編。第64回メフィスト賞満場一致の受賞作。


(公式から引用)



 心に残ったセリフ


「正義は人間が支配している。」


「人間が正義を独占しているんじゃない。人間が正義を創り上げてきたんだ。」





 読み終えた感想


ゴリラ視点で物語が進み、ゴリラの気持ちに感情移入する斬新な小説。


2016年にアメリカで実際にあった「ハランベ事件」が題材になっている。



ゴリラのローズからすると、愛する夫が理解できない理由で射殺された。

動物園の園長からすると、ゴリラの檻に入ってしまった子どもを救うため、仕方なくゴリラを射殺した。


裁判の争点は、

動物園の柵の高さ。

保護者の監督責任。

実弾ではなく麻酔銃ではダメだったのか。


中盤まで読んだ感想では、裁判に勝ったとしてなにになるのか。憤りは分かるが、悲しくてやるせないと思っていた。

終盤に差し掛かり裁判の争点が人権とはなにか、人間とはなにかにまで広がり、とても考えさせられた。



言葉は魔法にも呪いにもなる。

言葉が伝わらずとも、伝わらないからこそ、幸せな関係がある。


純粋さに胸を打たれる。

感動し魅了される小説でした。




 お勧めの関連本


  • アルジャーノンに花束を
  • ダーウィン事変
  • それをお金で買いますか――市場主義の限界
  • これからの「正義」の話をしよう
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