猛暑にて涼しさ醸す初雪葛
( もうしょにて すずしさかもす はつゆきかずら )


猛暑日が続きうんざりしている人も多いと思うが、そんな中でも涼し気な雰囲気を醸し出している草花がある。名前は「初雪葛(はつゆきかずら)」という。


 

この草花の注目点は葉色の変化。新芽の時には赤みのある淡いピンク色で徐々に白みが強くなる。その後、白と緑色の斑点が混ざった姿になり、最終的には緑一色になるが、晩秋から冬にかけて寒気に当たると赤く紅葉する。


 

名前は、夏から秋にかけて白みが強くなる様子が、初雪が積もった時の様子に似ているところから付けられたそうだ。「葛(かずら)」は、つる性植物の名前に付けられことが多く「蔓」と書くこともある。


 

本日の掲句は、そんな「初雪葛」を見て詠んだ句である。それにしても植物名に「初雪」を冠するとは・・・。命名者は余程暑さに参っていて、この草花に「初雪」の幻影を見たのではないかと思う。

尚、「初雪葛」は季語になっていないが、「猛暑」と「涼しさ」がともに夏の季語なので季重なり。句趣から止むを得ない。


 

因みに、「初雪葛」に関しては、過去に以下の句を詠んでいる。。

【関連句】
① 名も色も涼しきことよ初雪かずら
② 炎熱を冷ましてたもれ初雪葛
③ 軒下の残暑に初雪かずらかな 



 

①は、夏の終わりに詠んだ句。名前も葉の色もいかにも涼しげだと詠んだ。本句は、「涼し」が季語(夏)。
②は、この暑さを少しでも冷(さ)ましてくれと「初雪葛」に念願した句。「炎熱」は、「夏の厳しい暑さ」のことで、夏の季語。

*たもれ:文語の動詞「たもる」の命令形。「~してたもれ」の形で、「~してください」の意。
③は、立秋後のまだ残暑が厳しきおり、ある家の軒下に植えてあった「初雪葛」を見て詠んだ句。「残暑」が秋の季語。


 

「初雪葛」は、キョウチクトウ科テイカカズラ属の蔓性常緑低木。原産地は日本、朝鮮半島で、「定家蔓(ていかかずら)」の斑入り園芸品種である。寄せ植えやハンギングバスケット、地面を覆うグランドカバーなどによく利用される。


 

「定家葛」の一品種なので、その花を小さくしたようなスクリュー型の花をごく稀に咲かすが、ほとんど目立たない。別名に「五色葛(ごしきかずら)」がある。

*初雪葛の花 (5月下旬撮影)


 

初雪葛は季語になっていないせいもあり、詠まれた句はほとんどないので、参考句は割愛する。

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