塀を越え簾に絡む薮枯らし
( へいをこえ すだれにからむ やぶからし )


昨日は、「雑草」について、「人間の生活範囲に、人間の意図にかかわらず自然に繁殖する植物のこと」という定義を示したが、今日は、その典型の一つでもある「薮枯らし(やぶがらし)」を取り上げたい。



この雑草は、昨日取り上げた「山牛蒡(やまごぼう)」と違って、蔓を伸ばして近くにある植物に覆いかぶさって生長し、枯らしてしまうほどの生育力を持つ。何とも恐ろしそうな名前は、そのことに由来する。



その「藪枯らし」が廃屋になっている隣家に繁茂していて、今年はブロック塀を乗り越え、簾に絡みながら生長している。直ぐに取り除けば、どうってことはないのだが、どこまで伸びるか観察するために暫く放置している。

本日の掲句は、その様子を見ながら、その生長力の強さに驚きをもって詠んだ句である。「薮枯らし」は夏の季語。



ところで、この草花の面白さは、その花の色と形にも見られる。遠くから見ると茎の先に網のようなものが広がり、ピンクや橙色の小さなものが散らばっている。



ネットで概要を調べると、花は直径約5mmで薄緑色の花弁4枚と雄蕊が4本、雌蕊が1本ある。花弁と雄蕊は開花後半日ほどで散り、直径約3mmの橙色の花盤(盤状の花托)の中央に、白色の雌蕊が立ったまま残る。

それが、蝋燭(ろうそく)或いは独楽(こま)のように見え、可愛いという人もいる。また、色は緑→橙→ピンクと変化する。



因みに、「藪枯らし」に関しては、過去に以下の句を詠んでいる。


【関連句】
① 薮枯らし足長蜂が護衛とは 
② 意外にも持てる強面薮枯らし
③ 廃業の店に蔓延る藪枯らし



 

①は、我が小庭に蔓延った「薮枯らし」を取り除こうとしたら、足長蜂(あしながばち)が沢山群がっていて取り除けなかったことを詠んだ。
②は、名前や花の形は強面(こわもて)だが、いろいろな虫が群がっているのを見て、虫たちには意外と持てると詠んだ句。
③は、「薮枯らし」が、廃業されて久しい店の壁を覆うように、今年も繁茂しだしたことを詠んだ。



「薮枯らし」(薮は藪とも書く)は、ブドウ科ヤブガラシ属の蔓性多年草。道端、林縁、荒れ地などに生え、市街地では公園のフェンスなどによく絡まっている。花期は6月~8月。「貧乏葛」という異名がある。



薮枯らしを詠んだ句はそれほど多くないが、ネットで見つけたいくつかの句を参考まで以下に掲載した。

【薮(藪)枯らしの参考句】
藪からし振り捨て難く村に住む(百合山羽公)
学荒ぶヒマラヤシーダへ藪からし (中村草田男)
狂ひ泣く童女光れり薮からし (原裕)
やぶがらし穴はたちまち塞がりぬ (田村みどり )
やぶからしかつぎてかしぐ生垣かな (吉田冬葉)