雑草の王のごときや山ごぼう
( ざっそうの おうのごときや やまごぼう )


今現在、近辺の住宅街を歩くと廃屋や空地を時々見かける。何年も放置されており、様々な雑草が生い茂っている所もあるが、その中にひと際大きな草を見かけることがある。



名前は「洋種山牛蒡(ようしゅやまごぼう)」というが、先日はある空地で、太い茎に大きな葉をつけ、房状に多数の小花を付けているのを見た。その大きさ、風貌から雑草の王といっても良いだろう。

本日の掲句は、そんな印象をそのまま詠んだものである。尚、「洋種山牛蒡」は音数が多いので「山牛蒡」に短縮している。尚、「山牛蒡の花」は夏の季語になっている。



ところで、生物学者でもあった昭和天皇が側近に対し「雑草という草はない」とたしなめられたというエピソードがある。

この言葉は、側近が天皇を庭園に案内していた時に、「ここから先は雑草です」と言ったことに対して天皇が、「どんな草にも名前がつけられており、何でもかんでも一緒くたにして雑に扱ってはいけない」と注意されたそうだ。

*「雑草という草はない」という言葉は、植物分類学の礎を築いた牧野富太郎氏の言葉で、交流があった天皇が引用されたのではないかとも言われている。



とはいえ、学者でもない一般人がそれらの名前を全て覚えるのは難しい。「雑草」という名前の草はないとはいえ、植物を分類区分するために、便宜上「雑草」という言葉が使われることも多い。



因みに、「雑草」に関しては、いろいろな定義があるが、比較的分かりやすい定義として以下のものが上げられる。(Wikipediaより)

雑草とは、人間の生活範囲に、

人間の意図にかかわらず自然に繁殖する植物のこと。 

「野草」という言い方もあるが、これは山野に自然に生えている草のこと。だから、同じ野草でも人間の生活範囲で自然に(管理されずに)生えるものは「雑草」に分類される。



話は戻って、「山牛蒡」に関しては、過去に以下の句を詠んでいる。        

【関連句】
① 図太きは我が取柄なり山牛蒡
② 山牛蒡おのが重さに倒れけり
③ 廃屋にあまた実垂らす山牛蒡




①は、この山牛蒡にあやかって、自分も図太く生きたいものだという願いをこめて詠んだもの。
②は、あまりにも大きくなり過ぎ、その重みに耐えかねて倒れているのを見て詠んだ句。「山牛蒡」の茎は空洞になっており弱い。
③は、何年も放置されている廃屋に、その「洋種山牛蒡」が繁茂していて、多くの実を塀越しに垂らしているのを見て詠んだ句である。



「洋種山牛蒡」は、ヤマゴボウ科ヤマゴボウ属の多年草。原産地は北アメリカで明治初期に渡来。繁殖力、成長力が強い植物で、一度根付くと葉を一杯に広げながら、高さ約2メートルぐらいまで成長する。

6月~7月頃に淡紅色の花をつけ、8月~10月頃に濃紫色のブドウを小さくしたような実をつける。この実を潰すと真赤な汁が出ることからインクベリーとも呼ばれている。尚、本種は全体が有毒。


*洋種山牛蒡の実  (昨年10月に撮影)

 

名前に「山牛蒡」がついているのは、既述の通り、根が食用のキク科ゴボウ属の「牛蒡」に似ていることによる。また、「洋種」は在来種と区別するためにつけられたとのこと。

「山牛蒡」の花を詠んだ句はいくらかあるが、記事が長くなったので割愛する。