君子とは如何なる人かアガパンサス
( くんしとは いかなるひとか あがぱんさす )


6月の末頃から、近辺を歩くとやたらと目に付く草花がある。和名は「紫君子蘭(むらさきくんしらん)」といい、洋名は「アガパンサス」という。



和名は、「君子蘭」(下写真)という別の花に咲き方が似ており、花色が紫色だということでつけられた。

【君子蘭】 (本年4月に撮影)

ヒガンバナ科クンシラン属常緑多年草。原産地:南アフリカ。花期:3月~5月頃。春の季語。



本日の掲句は、その名にある「君子」は、今ならどんな人をいうのか気になり、その疑問をそのまま詠んだ句である。下五に「アガパンサス」という洋名を入れたが、和名が「紫君子蘭」ということを知らなければ、理解しがたい句かもしれない。

尚、「アガパンサス」「紫君子蘭」は季語になっていないが、この時期に咲く花なので、掲句では夏の季語に準じるものとして詠んでいる。



ところで「君子」に関し、ネットの辞書で調べると以下の説明があった。(精選版 日本国語大辞典 )

① 一般民衆より上位の立場にある人。高位・高官の人。政治を行なう人。為政者。
② 徳行のそなわった人。学識、人格ともにすぐれたりっぱな人。人格者。中国で、儒教の道徳を身につけた教養人。



①について言えば、国会議員や官僚、自治体の首長(知事、市長など)が該当し、②については、大学の教授や学者、小中高の先生などが該当すると思うが、「君子」と呼ぶには、何かが違うような気がする。

 


 

情報が統制されていた昔なら、上記の人は無条件に尊敬され、崇(あが)められたと思うが、今は、ネットなどの普及により、ポジティブ(肯定的)な部分だけでなくネガティブ(否定的)ことが暴露される。だから、私こそ「君子」ですとすましている訳にはいかない。

そのせいか、今は「君子」という言葉はほとんど使われない。むしろ、「真面目すぎる人」や「堅い人」などを「聖人君子」といって揶揄(やゆ)することがある。



話は戻って、「アガパンサス」「紫君子蘭」に関しては、過去に以下の句を詠んでいる。

【関連句】
① むらさきの風通る道アガパンサス
② 川べりに気高く紫君子蘭
③ 浴衣着て湯の町歩くアガパンサス



 

①は、疏水べりの散策路に多数開花しているのを見て詠んだ句。薄紫の花が何とも清々しい風を吹かしている、そんな感じを詠んでみた
②は、川べりに咲いた「紫君子蘭」の気高い印象を名前にかけて詠んだもの。
③は、温泉街を浴衣で歩いている様子を想像して詠んだ句。本句では「浴衣」が夏の季語となる。



「紫君子蘭」は、ヒガンバナ科アガパンサス属(ユリ科に分類されることもある)の多年草。原産地は南アフリカで、日本には、明治の中頃に渡来した。花期は6月~7月。長く伸びた茎の先に紫の小花を20個ほどつける。園芸品種も多く、花色には淡青色、濃紫色、白色がある。

洋名の「アガパンサス(Agapanthus)」は、「agapa」は愛らしい、「anthos」は花で、「愛らしい花」の意。「アフリカンリリー」ともいう。


「アガパンサス」及び「紫君子蘭」は季語になっていないこともあり、詠まれた句はほとんどない。それ故、参考句は割愛する。