喫煙者今はみじめや花煙草
( きつえんしゃ いまはみじめや はなたばこ )


植物園にいくメリットの一つは、何といっても近辺では見れない植物、あるいは全く見たことがない植物が見られることである。今日取り上げる「煙草」という植物もその一つである。

20歳になって直ぐ「煙草」を吸い始めたが、「煙草」という植物は見たことがなかった。それを初めて見たのは数年前のことで、場所はやはり植物園だった。



実のところ、それよりも以前から見てはいたが、あまり気にかけていなかっただけかもしれない。面白い花だなと思い名札を見たところ「ニコチアナ」と書いてあった。和名は「花煙草(はなたばこ)」。



本日の掲句は、その「花煙草」を見て詠んだ句である。長い間、ヘビースモーカだったが十年ほど前に喫煙を止めるまでのことを思い出しながら詠んだ句である。



振り返れば、1970年代に煙草の有害性が指摘され始めたことをきっかけに、非喫煙者の健康権を保護するために世界的に嫌煙運動が始まった。特に2000年代からは受動喫煙を防止するという名目で、喫煙する場所や時間を区切る「分煙」が病院・学校・交通機関・飲食店などの公共施設から始まった。

それが私企業にも一気に広がり、会社内に「喫煙室」が設置されて、そこでしか喫煙できなくなった。更には、それすら廃止され、外でしか吸うことができなくなり、だんだんとみじめな境遇に追いやられた。



こうなると、仕事にも差し支えが出てきて、遂には仕事を止めるか喫煙を止めるかの選択が迫られることになる。自分の場合、その他の要因も絡み、仕事も喫煙も止めることになった。

今から振り返ってみれば、それはそれで正解であり、今は喫煙していた時よりも健康的で快適な生活ができていると思う。



尚、今も愛煙家を貫いている人もおられるが、データーでは、1966年(昭和41年)の83.7%をピークとし、それから年々低下し、2022年には日本の成人の喫煙率は男性で25.4%、女性で7.7%になったそうだ。凄まじい変化である。



話は戻って、「花煙草」に関しては、過去に以下の句を詠んでいる.

吸うよりも見るが宜しき花たばこ

本句は、健康を害するといわれる煙草を吸うよりも、「花煙草」を観賞する方が健康のためには各段に宜しいというのが句意。



園芸品種の「花煙草」=「ニコチアナ」は、ナス科タバコ属(ニコチアナ属)の多年草。原産地は南アメリカなど。夏の暑さと乾燥に強く、ジメジメした環境は好まない。

花期は6月~10月。長い花筒の先に星型の花を咲かせる。花色は白だけでなく、赤、ピンク、グリーンなどがある。葉にはニコチンが含まれており、タバコの原料となる。



「煙草の花」「花煙草」を詠んだ句は結構あり、以下にはその中からいくつか選んで掲載した。

【煙草の花等の参考句】
石切の山荒々し花煙草 /岡山裕美
うすうすと山見えてをり花煙草 /土井三乙    
山あひを白く雨くる花煙草 /大崎紀夫
花煙草川の匂ひを運ぶ風    /鈴木崇    
煙草の花改札口に子供の瞳 /桜井博道