真夏日に霜降りしごと白妙菊
( まなつびに しもおりしごと しろたえぎく )


ここ数日は、曇り空と断続的な雨が続いており、不快指数が日に日に高まってきている。そんなおり、多少とも涼しさを感じてもらおうと、今日は「白妙菊(しろたえぎく)」を取り上げた。



この草花の名は、葉や茎に細かい白い毛がつき、全体が白銀色(シルバー)に見えることから、それを「白妙(しろたえ)といい、「菊」に似た花を付けることから命名された。
*白妙:コウゾなどの木の皮の繊維で織った真っ白な布のこと。「衣」にかかる枕詞。単に白い色のことをいう場合もある。



その草花が、数週間前から黄色い小菊のような花を咲かせており、その姿が何とも涼やかな景を醸し出している。

本日の掲句は、そんな様子を見て詠んだ句だが、「真夏日」と「霜」と取り合わせが面白いと思い詠んでみた。


 

中七については、当初「霜降る(ふる)ごとく」としていたが、雪は降る(ふる)が霜は降りる(おりる)というのが一般的だというので、掲句のように変えた。もっとも漢字で「降りし」と書けばどちらにも読めるが。



尚、「白妙菊」は季語になっていないので、本句では「真夏日」が夏の季語となる。「霜」も冬の季語になるが、本句では喩えとして使用したので考慮に入れない。



因みに、「白妙菊」に関しては、過去に以下の句を詠んでいる。

【関連句】
① 路地裏に涼しさ醸す白妙菊
② 涼しさを纏い咲きけり白妙菊
③ 梅雨明けや白妙菊に黄花咲く




①は、路地裏で涼し気に咲いている「白妙菊」を見て詠んだ句。
②は、①と趣向は同じだが、少し表現を変え、涼しさを纏(まと)って咲いているとした。①、②ともに「涼しさ」が夏の季語。
③は、梅雨明けに黄色い小菊のような花を咲かせていたので、その様子を詠んだ。本句では「梅雨明け」が夏の季語。



「白妙菊」は、キク科セネシオ(キオン)属の常緑性多年草。原産地は地中海沿岸。日本には明治末期に渡来。花期は6月~7月。既述の通り、花茎の先に「菊」に似た黄色い花を多数咲かせる。

ただ、もっぱらシルバ-の葉が好まれ、栄養が取られないようにと、花は蕾の内に切られることが多いそうだ。



英名はダスティーミラー(Dusty miller)。これは「ホコリまみれの粉屋」という意味で、全体に粉を吹いたような草姿に由来する。他にシルバーダスト、シルバーレースとも言われている。

「白妙菊」は季語になっていないこともあり、これを詠んだ句はほとんどなく、参考句は割愛する。