麦藁帽の君に耀う麦藁菊
( むぎわらぼうの きみにかがよう むぎわらぎく)


今日取り上げる「麦藁菊(むぎわらぎく)」は、近辺ではあまり見かけないので、多分知らない人が多いかもしれない。名前に「麦藁」が付いているので、名前だけ聞けば、素朴な花を連想するかもしれないが、写真の通り、実に華やかな花である。



それなのに何故「麦藁菊」と命名されたかというと、花弁のように見える総苞片(そうほうへん)には、ガラス質の一種「ケイ酸」を含まれており、質感が乾燥した麦藁を連想させ、形が菊に似ているためである。
*総苞片:キク科やセリ科などの花序(かじょ=花の集まり)を保護する苞葉(ほうよう)のこと。

実際に触ってみると、そのことがよく分かるが、ガラス質が含まれるので、光が当たるとガラス細工のように反射する。



本日の掲句は、そんな「麦藁菊」を「麦藁帽」を被った君(彼女)が観察している情景を想像して詠んだ句である。
*耀う(かがよう):きらきら光ってゆれ動く。きらめきゆれる。

上五は字余りになっているが、現在の人気歌手「あいみょん」の歌「マリーゴールド」に出てくるフレーズ「麦わらの帽子の君」を参考にした。



尚、「麦藁菊」は歴とした夏の季語になっている。一方「麦藁帽」も夏の季語なので本句は季重なり。

 


 

因みに、「麦藁菊」に関しては、過去に以下の一句のみ詠んでいる。

麦藁菊まばゆきガラス細工かな

「麦藁菊」がガラス細工のように反射している様子を見て詠んだ。



「麦藁菊」は、キク科ムギワラギク属の多年草。原産地はオーストラリア。日本には明治初期に渡来。草丈は50cm~1mくらい。



花期は5月~9月。花径は3cm~5cmほど。中央の小花はあまり目立たないが、その周囲に幾重にも重なった総苞片が舌状花に見える。花色は赤やピンク、黄、白など。切り花、ドライフラワーにもよく使われる。



名前の由来については、既述の通りだが、実は英名が”Straw flower”であり、それを単に和訳したものだともいわれている。

学名の「ヘリクリサム( Helichrysum)」はラテン語で「太陽の黄金」の意。別名の「帝王貝細工(ていおうかいざいく)」は、花びらの独特の硬さから。



「麦藁菊」を詠んだ句は少なく、ネットで探しても見つからなかったので、参考句は割愛する。